行政書士の主要な業務は書類作成ですから、業務中に印鑑を使うケースが多くあることは、どなたでもイメージできるでしょう。
ただ、一方で
行政書士が使う印鑑については、法律等で詳細に定められており、行政書士会への登録が必要。登録された印鑑以外を使うことは禁止されている
ということは、受験生の方にも、あまり知られていないのではないでしょうか。
たとえば、行政書士が顧客から報酬をもらい、領収書を発行する際も、行政書士会に届けた印鑑でなくてはなりません。
一般に行政書士の仕事は前金でもらう場合が多いですから、行政書士会への登録が完了しても、印鑑の登録ができていなければ、仕事の受注すらできない!ということになるのです。
つまり、独立後すぐに行政書士として活動したい方は、行政書士登録と同じぐらい印鑑の登録が重要ということになります。
このように重要な行政書士の印鑑について、この記事では分かりやすく説明します。
行政書士の印鑑 正式名称は「職印」
行政書士が業務で使用する印鑑の正式名称は「職印」といい、一般には「資格印」「先生印」「肩書印」と呼ばれることもあります。
具体的な職印についての規定は、行政書士法施行規則の第9条~第11条、および日本行政書士会連合会の会則に記載されています。
行政書士法施行規則の規定では、書類や領収証に印鑑(職印)を押すことが定められている
まず、行政書士法施行規則の第9条~第11条を見てみましょう。
(書類等の作成)
第九条 行政書士は、法令又は依頼の趣旨に反する書類を作成してはならない。
2 行政書士は、作成した書類に記名して職印を押さなければならない。
(領収証)
第十条 行政書士は、依頼人から報酬を受けたときは、日本行政書士会連合会の定める様式により正副二通の領収証を作成し、正本は、これに記名し職印を押して当該依頼人に交付し、副本は、作成の日から五年間保存しなければならない。
(職印)
第十一条 行政書士は、日本行政書士会連合会の会則の定めるところにより、業務上使用する職印を定めなければならない。
9条と10条では、業務上で作成した書類や領収証に「職印」を押さなければいけないと規定されています。
また、11条では職印について日本行政書士会連合会の会則に定めがあることが記されています。
日本行政書士会連合会会則第81条では、印鑑(職印)の詳細について定められている
行政書士の職印については、日本行政書士会連合会会則第81条によって「角印」「縦書き」「『行政書士〇〇(名前)之印』と表記」とすべきことが決められています。
また、作成した印鑑(職印)については、会員が所属する行政書士会に届け出ることが必要です。
なお、新人行政書士が起こしがちなミスとして、「角印」と決まっているにも関わらず、うっかり「丸印」で制作する方が散見されます。必ず「角印」で作成してください。
印鑑(職印)のサイズや書体、品質は?
印鑑(職印)のサイズは?
日本行政書士会連合会会則で定められているのは、上記の「角印」「縦書き」「『行政書士〇〇(名前)之印』と表記」までです。
印鑑(職印)のサイズについては行政書士法や日本行政書士会連合会会則に規定はありませんが、加盟する各都道府県の行政書士会で決められていることがあります。
そのため、印鑑(職印)を作成する前に、各都道府県の行政書士会にて細かい指導を受けることを推奨します。
なお、都道府県の行政書士会で印鑑(職印)のサイズについて細かい規定がない場合は、小さめのサイズで作成されることをおすすめします。
よく、大きめのサイズの印鑑(職印)をお持ちの方がいますが、書類や領収証の種類によっては印鑑を押す位置に示す枠線が書かれていることがあり、大きめの印鑑だと枠線をはみ出すことがあります。
あまり体裁がよいものでもないので、印鑑(職印)は小さめなものを作っておくほうが無難でしょう。
印鑑(職印)の書体やサイズは?
書体や職印自体の品質について特に規定はありません。ただ、書体については「篆書体(てんしょたい)」がおすすめです。
「篆書体」は士業全般の印鑑で使われることが多い書体で、複雑な形状のため偽造されることが少ないとされています。
特にこだわりがなければ、「篆書体」で印鑑を作成するのが無難でしょう。
また、印鑑の品質については、あまり安いものではなく、ある程度、品質の高いものをおすすめします。
印鑑(職印)は行政書士にとって「侍の持つ刀」みたいなものですから、あまり安っぽいものでない方がよいと思います(それでも、せいぜい1万円~2万円程度のもので充分です)。
印鑑(職印)の「アタリ」はあった方がよい
「アタリ」とは印鑑(職印)の上部を分かりやすくするための突起のことです。
行政書士は印鑑を多用しますので、アタリがあれば押印がスムーズとなるため、馬鹿にはできない程度の効率化が図れます。
印鑑(職印)を作成するタイミング
冒頭でも少し触れましたが、作成した書類に職印を押印しなければならないということは、即ち、もし「職印」を用意せずに開業をしてしまっても、書類の作成や領収書の発行ができないことになります。
つまり、受注ができないのです!
そのため、行政書士登録申請後、事務所調査が終わり、無事に登録完了通知が届いたら、すぐに作成に取り掛かることが必要です。
その後、登録証授与式の時には、すでに職印が出来上がっているのが望ましいと言えるでしょう。また、登録証授与式の日に職印の登録も済ませてしまうのがベターです。
行政書士の印鑑と一緒に手配しておきたいもの
職印と同時に、ゴム印や銀行印も注文したほうがよいでしょう。
その他、朱肉、押印マット、印鑑ケースなども必要となります。
行政書士の印鑑は、どこで注文するのがよい?
印鑑(職印)の注文はネット販売が便利です。判子のネット販売には様々なものがありますが、最低でも「士業向け印鑑」の専用ページがあるショップで購入しましょう。
なかには、「行政書士の印鑑(職印)」に特化した販売ページがある業者もあります。そのような業者であれば職印に対するルールにも詳しく、新人行政書士が間違えて「丸印」を注文することもないので安心です。
その他、「価格が妥当であること」「保証付き」「ネットの口コミが悪くない」などもチェックをして注文する業者を決めてください。
この記事の監修者 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |