通関士とは?
通関士とは、物品の輸出や輸入に必要な書類の作成や手続きが代行できる者を指します。
財務省が管轄している国家資格で「通関書類の審査」と「通関書類への記名・捺印」の2つの独占業務あり!
通関士を名乗るには、1年に1回実施される通関士試験に合格するだけでは駄目で、試験合格後に特定の通関業者に所属して財務大臣の確認を受けることが必要です。
ただ、実際に「通関士」と名乗れなくても、通関士試験合格者は「メーカー」「商社」「百貨店」「独立して貿易コンサルタント」など、様々な形で活躍しています。
独学で通関士試験に合格できる?
資格試験の取得を目指すに当たり、「独学で合格できる?」「スクールへの通学は必要?」と疑問を抱えますよね。
以下、独学で通関士試験に合格できるのかまとめてみました。
難易度
通関士は貿易業界の税理士とも言われる資格で、難易度はかなり高めです。
貿易関連の法律知識や制度の関する理解など、試験では専門的な知識が要求されます。
通関士試験に独学で合格している方はいますが、簡単な道のりではないと心得ておかないといけません。
合格率
通関士試験の受験者数や合格者数、合格率のデータは下記の通りです。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2014年度 | 7,692名 | 1,013名 | 13.2% |
2015年度 | 7,578名 | 764名 | 10.1% |
2016年度 | 6,997名 | 688名 | 9.8% |
2017年度 | 6,535名 | 1,392名 | 21.3% |
2018年度 | 6,218名 | 905名 | 14.6% |
2019年度 | 6,388名 | 878名 | 13.7% |
2020年度 | 6,745名 | 1,140名 | 16.9% |
2021年度 | 6,961名 | 1,097名 | 15.8% |
合格率は10%~15%程度で推移していますので、通関士の難易度の高さはおわかり頂けるのではないでしょうか。
勉強時間
通関士の試験に合格できるまでの勉強時間は、初学者なのかどうかで違いがあります。
通関士試験合格までの勉強時間 | |
---|---|
法律関係の初学者 | 最低でも400時間~500時間が目安 |
法律や貿易の知識がある | 300時間~350時間が目安 |
あくまでも目安ですので、もっと短い時間で通関士の独学合格も可能です。
貿易関連実務と法律学習経験、独学にはどちらかが必要
通関士試験に独学で合格するには、貿易関連実務と法律学習経験のどちらかが必要だと考えておきましょう。
貿易関連の仕事をしていたり法律の学習を経験していたりという方は、独学での合格率がアップしますよ。
完全に初学者の方は、スクールへの通学や通信講座の利用を検討してみてください。
独学で通関士を目指すメリット
独学で通関士を目指すに当たり、どのようなメリットがあるのかいくつか挙げてみました。
コストが安い
通関士の独学でかかる費用は、「テキスト代」「模試代」「受験料」くらいです。
スクールへの通学や通信講座の利用と比較してみると、コストを圧倒的に抑えることができます。
勉強時間・勉強場所の制約がない
勉強時間や勉強場所の制約がないのは、独学で通関士の資格を取得するメリット!
自分の好きな時に好きな分野の勉強をマイペースで取り組むことができます。
周りを気にせずに地道に勉強に取り組みたいのであれば、独学を選んだ方が良いでしょう。
独学で通関士を目指すデメリット
「金銭的な負担が少ない」「好きな時間に勉強できる」という利点に惹かれて、独学で通関士を目指している方はいます。
しかし、独学には次の4つのデメリットがありますので注意しましょう。
学習計画が狂いがち
通関士の通信講座では、今までのノウハウを積み重ねたカリキュラムが組まれています。
一方で独学は自分でスケジュールを組み、通関士に合格するための勉強を継続しないといけません。
自分で設定したスケジュールが合わないと、学習計画が狂いがちになりますよ。
疑問点を解消しにくい
独学で通関士の勉強をしていると、自力で疑問点を解消しにくいのが大きなデメリットですね。
疑問点を解消するまでに余計な時間がかかると、効率良く勉強を進めることができません。
また、独学はどのくらい理解できているのか客観的に把握するのが難しく、自分の今のレベルで不安を感じることも…。
学習のサポートで比較してみると、独学よりも通関士のスクールへの通学や通信講座に軍配が上がります。
法改正の情報が入りにくい
通関士の試験で問われる関税法や関税定率法は、定期的に法改正が行われます。
本番の試験では新しい法律をもとにした問題が出題されますが、独学だと法改正の情報が入りにくいのがデメリットです。
法律に詳しくない人は、新しい情報を自分で探すまでにかなりの時間を費やすことになります。
モチベーションが続かないことがある
長期間に渡る勉強スケジュールを一人でこなすのは意外と大変です。
スケジュール通りに学習を進められなかったり難問に躓いたりと、様々な理由でモチベーションが続かないことも…。
モチベーションの維持が苦手な人は、独学以外の方法で通関士を目指しましょう。
通関士試験に独学で合格するポイント
次に独学で通関士試験に合格する上で押さえておきたいポイントを解説していきます。
余裕をもって勉強時間を確保する
通関士の試験範囲は、「通関業法」「関税法等」「通関実務」の3つに大きくわけられます。
かなり出題範囲が広いため、独学で合格を目指すには余裕をもって勉強時間を確保すべきですね。
上記の項目でも解説した通り、通関士に合格するには400時間~500時間程度の勉強が必要ですので、半年前くらいから学習スケジュールを立てましょう。
最初に学習計画を立てる
通関士の試験に限った話ではないものの、資格試験は最初に学習計画を立てるのがポイント!
仕事や日常生活を見直して1日に使える勉強時間を想定し、通関士試験本番までのスケジュールを組んでいきます。
本試験は例年10月上旬~中旬に実施されますので、4月辺りから勉強を始めるのが理想です。
合格基準点を超えることを目標とし、完璧を目指さない
通関士試験の独学で、100点満点の完璧を目指す必要はありません。
試験で100点が取れなくても、合格基準点を超えれば資格を取得できますよ。
完璧を求めるのは勉強時間が長くなって非効率ですので、合格基準点を超えることを目標にして勉強を進めましょう。
通関実務を最優先にする
通関士試験に独学で合格を目指すに当たり、通関実務は最優先すべき科目です。
通関実務は、「申告書作成」「計算問題」「複数肢選択式」「択一式問題」で構成されています。
試験の合否を分ける科目ですので、問題を繰り返し解いて慣れておくのが大事です。
法律科目(通関業法、関税法等)は、しっかり暗記する
計算問題がある通関実務とは違い、通関業法や関税法等の法律科目は暗記が物を言います。
単純に知っているのかどうかが試験で問われますので、テキストや参考書を使って正しい知識をインプットしましょう。
過去問を徹底的にやる
通関士の試験に合格するには、知識のインプットだけではダメです。
法律科目の暗記に加えて、過去問を徹底的にやり込んでアウトプットする必要があります。
本番の試験問題は過去問を中心に出題されますので、古い問題から順番に解いてなぜ間違えたのか見直してください。
模試受験後に必ず復習する
通関士の試験前に模試を受験するメリットは次の4つです。
- 法改正や出題トレンドを踏まえた試験を受けられる
- 本番と同じ形式で予行演習ができる
- 今の自分の実力を客観的に把握できる
- 試験本番の空気感に慣れて緊張せずに済む
模試は受けて終わりではなく、必ず参考書やテキストに戻って復習しないといけません。
通関士の独学に向いている人のタイプは?
通関士の試験に独学でチャレンジするのはメリットとデメリットがあります。
そこで、どのような人が通関士の独学に向いているのか、いくつかのタイプを見ていきましょう。
自分で疑問を解消できる人
何かわからない部分の疑問を自分で解消できる人は、通関士の独学に向いています。
あれこれと調べて疑問点を解消できれば、スクールへの通学や通信講座に頼らなくても大丈夫です。
通関士の試験に限った話ではありませんが、理解できない部分をそのまま放置するのはNG…。
その問題が本番の試験で出題されると得点できないので、「なぜ○○○になるのか?」と解決すべきですね。
計画どおりに地道にコツコツできる人
通関士に合格するには、最初にスケジュールを立てて学習を進めないといけません。
つまり、計画どおりに地道にコツコツできる人は、独学でも合格を目指すことができますよ。
逆に言えば、コツコツと学習を継続できない人は独学に向いていません。
意志の強い人でも勉強の途中でモチベーションが下がることはありますので、勉強と休憩を上手く織り交ぜて長続きさせましょう。
計画の見直しや改善を柔軟にできる人
最初に通関士の学習スケジュールを立てても、その通りに事が運ぶとは限りません。
途中で軌道修正が必要なケースは出てきますので、計画の見直しや改善を柔軟にできる人は独学に向いているタイプです。
何事にも冷静な性格の人だと、成功に繋がる改善策を見出すことができます。
何事にも前向きに取り組める人
通関士の独学は孤独との戦いですので、何事にも前向きに取り組めるのかどうかは大事です。
ネガティブ志向の人ほど、一度勉強で躓くと挫折しやすくなります。
物事は前向きに取り組むほど良い結果が出やすいですね。
通関士試験の独学用おすすめテキスト
テキストの選び方によって、通関士試験の合否が決まります。
以下では、通関士試験の独学用おすすめテキストをいくつか挙げてみました。
通関士教科書 通関士 完全攻略ガイド
「通関士教科書 通関士 完全攻略ガイド」は、通関士書籍の売り上げ第1位を獲得しているテキストです。
基礎から始めても無理なく合格力を身に付けられるように、次の3つの特徴を持ち合わせています。
- 難しい条文を理解のポイントで丁寧に解説している
- 豊富なイラストと図表でイメージが記憶に残りやすい
- 章末にチェック問題と要点整理を掲載している
現在では2022年版が出ていますので、最新の「通関士教科書 通関士 完全攻略ガイド」を購入しましょう。
通関士試験合格ハンドブック
「通関士試験合格ハンドブック」は、難関資格試験の合格に必要なエッセンスが凝縮されています。
基本知識を押さえることをコンセプトにしつつも、貿易実務の諸制度や法改正情報を2022年向けにアップデート!
巻末には試験を想定した模擬試験が収録されていますので、直前対策としても使えるテキストですよ。
どこでもできる通関士選択式徹底対策
「どこでもできる通関士選択式徹底対策」は、選択式問題をいつでもどこでも学習できるツールです。
通関士の試験では様々な形式の問題が出題されますが、中でも語群選択式問題の配点は高めに設定されています。
「どこでもできる通関士選択式徹底対策」は図解で要点を理解しながら空欄穴埋め問題を解き、語群選択式問題を得点源にできる参考書ですね。
通関士試験ゼロからの申告書
実務経験のない初学者にとって、通関士試験の申告書作成は頭を悩ませます。
「通関士試験ゼロからの申告書」は、輸出入申告書対策に焦点を当てた独学におすすめのテキストです。
輸出申告と輸入(納税)申告の2つのカテゴリーで、15題ずつのオリジナル問題が収録されています。
絶対に避けては通れない試験科目ですので、「通関士試験ゼロからの申告書」でしっかりと対策してください。
通関士試験の独学におすすめのサイト
通関士の試験に独学で合格するには、ありとあらゆるツールを使うのが実に効果的です。
このページでは、通関士試験の独学におすすめのサイトを2つ紹介していきます。
通関士ポータル
通関士の独学で情報収集はネックになりやすいのですが、通関士ポータルが解決してくれます。
通関士ポータルは通関士の情報収集から試験対策までを網羅したサイトで、掲載されている情報は「通関士アラカルト」「通関士試験情報」「リファレンス」など様々!
情報量の不足を補助してくれますので、通関士の受験生は是非とも使いたいものです。
※注意点
通関士ポータルは2021年の4月30日で閉鎖となりました。
通関士試験みこ
通関士試験みこは、通関士試験に関する情報を集めた総合情報サイトです。
SNSを中心に急成長した一大勢力「みこ会」の先生が運営しています。
試験や合格後のたくさんの情報を偏りなく収集していますので、一度通関士試験みこをご覧になってください。
参考:通関士試験みこ
まとめ
通関士の試験に独学で合格できるのかどうかおわかり頂けましたか?
通関士は合格率が低くて難易度の高い資格ですが、「勉強時間を確保する」「最初に学習計画を立てる」「通関実務を最優先にする」「過去問を徹底的に解く」といった対策で独学合格も夢ではありません。
この記事で紹介したテキストやポータルサイトを駆使して、通関士の資格取得を目指してみてください。
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