今回は、行政書士試験の「一般知識」科目のポイントや勉強方法についてお伝えします。
一般知識は、正式な科目名を「行政書士の業務に関連する一般知識等」といい、行政書士試験にしかない独特な科目です。
というのも、行政書士以外の国家試験(法律系)は、ほとんどが試験科目は法律関係だけだからです。
行政書士の一般知識は、一部の法律も含まれますが、一般常識的な内容が、広い範囲から問われる点が、独特です。
そのため、多くの受験生が
「一般知識の科目は、捨てたい(捨て問としたい)」
と思うようですが、単純に捨てるわけにはいきません。
なぜなら、一般知識の科目には「足切り点」が設定されているからです。
たとえ、法令科目で満点を取ろうとも、一般知識が足切り点以下の場合、行政書士試験には合格できません(というより、一般知識から採点され、足切りが確定すると、法令科目は採点されません)。
このように、一筋縄ではいかないイメージの強い一般知識ですが、どのように対応すべきでしょうか。
この記事では、行政書士試験の一般知識について、その概要や試験対策、勉強法について説明します。
ぜひチェックしてみてください。
一般知識とは
行政書士試験の一般知識は、以下の3分野から出題されます。
政治・経済・社会
行政書士は「街の身近な法律屋さん」として、法律に関わる様々な業務を依頼されることになります。
そのため、政治・経済に関する制度や状況、社会の動向など、ある程度、正しく認識しておくことが必要です。
以上のような理由から、政治・経済・社会に関する幅広い内容が問われることになります。
情報通信・個人情報保護
IT化により、社会は大きく変わりつつあります。また、行政書士の業務においても、電子申請の進展など、ITに関する知識は必要不可欠になっていくでしょう。
また、そうしたIT化の状況においては、情報セキュリティや個人情報保護に関する知見も必要不可欠です。
以上のような理由から、情報通信・個人情報保護に関する内容が問われることになっています。
文章理解
行政書士の仕事は、許認可申請をはじめ、様々な書類を作成することが非常に多い仕事です。
そのため、国語や文章理解の能力は、法律知識と同じぐらい重要といえるでしょう。
文書理解の分野では、文章の並び替え・文章の空欄補充のような出題がされます。
行政書士試験における一般知識の特徴
それでは、他の科目と比較した、一般知識の特徴を見ていきましょう。
行政書士試験の中で配点が300満点中、56点。4割未満では足切りになる!
まずは、行政書士試験全体と一般知識の配点を確認してみましょう。
- 基礎法学(2問):8点
- 憲法(6問):28点
- 民法(11問):76点
- 行政法(22問):112点
- 商法(5問):20点
- 政治・経済・社会(7問):28点
- 情報通信・個人情報保護(4問):16点
- 文章理解(3問):12点
上記のとおり、300満点中、配点は56点となっています。
残りの244点が、法令科目の配点ですので、一般知識の配点は、そこまで大きくありません。
しかし、前述のとおり、一般知識には足切り点があるので注意が必要です。
一般知識科目の得点が、満点の40%以上であること
というのが、足切りの条件です。
満点の40%以上ということで、14問中6問以上正解する必要があります。
※なお、それぞれの科目の勉強法については、下記の記事をご覧ください。
出題傾向 ~一般知識は5肢択一式、広範囲で難問も多い。
出題傾向や配点については次のとおりです。
5肢択一式
一般知識は5肢択一式で合計14問出題され、各4点のため、14×4=56点の配点となります。
通例では、政治・経済・社会が7問、情報通信・個人情報が4問、文章理解が3問、出題されます。
出題内容と難易度 ~まずは、文章理解や情報通信・個人情報で得点を稼ぐことを考える
政治・経済・社会
政治・経済・社会は、以下のような出題がされます。
・高校や大学入試の「政治経済」のような内容
・政治の基本原理(権力分立制など)
・国内政治や国際政治の制度
・行政改革
・国内経済
・日本の財政
・国際経済
・公害問題や地球温暖化問題
・社会保障(年金、介護)
・少子高齢化問題
・各種時事問題
以上のように、非常に広範な範囲から、まんべんなく出題されるのが、政治・経済・社会の特徴です。
正直なところ、かなり難易度が高いため、政治・経済・社会の分野は得点を計算することが難しいでしょう。
そのため、情報通信・個人情報保護や文章理解の分野で得点を稼げるように対応することが必要です。
情報通信・個人情報保護
情報通信では、まず、用語について問われます。IoT・クラウド・4G・LTEなど、比較的新しい用語もよく問われます。
また、暗号化技術や情報セキュリティについても頻出です。行政手続きのオンライン化や、情報通信周りの法律なども出題されます。
個人情報保護の分野では、個人情報保護法と行政機関個人情報保護法の2つが出題されます。
この分野は、まったくの法令科目と考えて構いません。条文をきちんと押さえることで正答を導けますので、、一般知識のなかでは、もっとも対応しやすい分野です。
とりこぼしのないようにしましょう。
文章理解
文章理解は、個人情報保護と同じぐらい得点しやすい分野です。
内容・レベルは、大学受験の現代国語と同等程度と考えてください。
文章の並べ替え、空欄補充、文章の内容把握の3パターンがあり、毎回、1問ずつ出題されるのが通例です。
出題形式が決まっているため、演習で形式に慣れておくことで対応できるでしょう。
3問中2問は正答する必要があります。
一般知識の得点目標
一般知識は14問中6問は死守、8問得点できれば十分です。
行政書士試験の合否は配点の大きい行政法・民法にかかっていますから、その2つを中心に勉強しながら、一般知識では「足切りを回避する」ことだけを考えていればOKです。
試験対策のポイントと勉強方法
分野別の勉強のポイント
政治・経済・社会
前述のとおり、政治・経済・社会の分野は、広い範囲からまんべんなく出題されるので、対応が非常に難しいです。
というより、正確に言えば
対策はあるのだが、きちんと対応をしようとすると、時間がかかり過ぎてしまう
という感じです。さらに、
対策をしたところで、どれぐらい得点に結びつくのか予想できない
ということもあります。
そのため、まずはテキスト(基本書)に掲載されているトピックと過去問を実施しましょう。
また、時事問題対策としては、普段からニュースや新聞の内容を意識してチェックするようにします。
そのうえで余裕があれば、大学入試センター試験や公務員試験のテキスト(政治・経済や時事問題のテキスト)を利用しましょう。
情報通信・個人情報保護
まず、個人情報保護については、個人情報保護法と行政機関個人情報保護法の2つについて、法令科目として対応しましょう。
情報通信については、最新のITトレンド用語や情報セキュリティ、暗号化技術、情報通信関連の法規が頻出です。
これに関しては、情報処理の国家試験「ITパスポート試験」の市販テキストの該当部分を読んでおくと良いでしょう。
上記の書籍は、物語風に各論点を説明しているので、他のテキストより読みやすい印象です。
繰り返しになりますが、一冊まるごと読む必要はありません。前述の該当箇所だけピンポイントでおさえましょう。
文章理解
前述のとおり、文章理解の出題パターンは決まっています。
あらかじめ出題パターンに慣れておくだけで対応のしやすさが全く違ってきます。
過去問を何度か繰り返してパターンを身につけたり、公務員試験の対策本で学習しましょう。
おすすめテキスト・六法・判例集・アプリなど
私が選んだ、テキストや六法、判例集・アプリなどについて以下の記事でご紹介してますので、良かったらチェックしてみてください。
初学者の方は、以下の入門版マンガテキストも参考にしてみてください。
行政書士 一般知識の試験対策のポイントと勉強法 <まとめ>
ここまで、行政書士試験の一般知識について書いてきました。
行政書士試験のなかでは、対応の難しい部分もある一般知識の科目ですが、できれば7~8問以上の正答を目標としてください。
ぜひ、この記事を参考にして、一般知識を攻略もらえると嬉しいです。
この記事の監修者 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |