司法書士

どれを選ぶ?「司法書士試験の過去問集」自分の勉強法にあったものを選ぼう

司法書士の過去問

資格試験の試験対策は過去問が基本となります。

その理由は、試験問題で何がどんなふうに問われ、何を答えればいいか、それを元にどんな学習をすればいいのかは過去問が基準になるからです。

受験予備校のカリキュラムや受験参考書の内容は、過去問の分析を元に作られています。

司法書士試験の場合に何年分の過去問に当たる必要があるのか、合格者がどれぐらいの時間をかけ、どういった勉強法で過去問を消化しているのか・・・

というのは受験生にとって気になる点です。

司法書士試験のスペック

過去問について考える前に、司法書士試験についてどんな試験なのかを確認しておきましょう。

司法書士試験は法務省が実施する国家試験です。

試験は年1回実施され、筆記試験と筆記試験の合格者には口述試験が行われます。
受験資格に年齢、国籍など一切の制限はありません。

筆記試験は択一式と記述式があり、択一式は5択のマークシート、記述式は登記申請書を実際に作成する内容となっています。

口述試験は筆記試験合格者のほとんどが合格すると言われています。

試験概要

試験スケジュール

受験申込書配布:4月
出願期間:5月
筆記試験:7月の第1または第2日曜日
口述試験:10月中旬
合格発表:11月

試験科目

ー午前の部(9:30~11:30)

<択一式(35問)>
憲法(3問)
民法(20問)
刑法(3問)
商法・会社法(9問)

ー午後の部(13:00~16:00)

<択一式(35問)>
不動産登記法(16問)
商業登記法(8問)
民事訴訟法(5問)
民事執行法(1問)
民事保全法(1問)
供託法(3問)
司法書士法(1問)

<記述式(2問)>
不動産登記法(1問)
商業登記法(1問)

<平成31年度(2019年度) 配点・基準点・基準点合格者数>

午前の部択一式
午後の部択一式
記述式
問題数
35問
35問
2問
配点
3点/問
3点/問
35点/問
合計点
105点
105点
70点
基準点(平成31年度)
75点
66点
32.5点
基準点をクリアした人の数(同上)
3,030人
2,817人

<平成31年度(2019年度) 受験者数・合格者数・筆記試験合格点>

受験者数:13,683人
合格者数:601人
合格率:4.4%
筆記試験合格点:280点中197.0点以上

※基準点・受験者数・合格者数
法務省 平成31年度(2019年度)司法書士試験の最終結果について(資料)
http://www.moj.go.jp/content/001308489.pdf
※基準点をクリアした人の数
法務省 平成31年度(2019年度)司法書士試験得点順位別員数累計表
http://www.moj.go.jp/content/001302015.pdf

司法書士試験の基準点と合格ライン

法務省の資料にあるとおり、筆記試験には午前・午後の択一式、記述式それぞれに基準点が設けられています。
基準点とは足切りのことです。

平成31年度(2019年度)の場合というただし書きが付きますが、

基準点の合計が173.5点(173,5/280=62%)
合格点が197.5点(197.5/280=71%)

ということは、その差24点。

基準点をクリアした上で、問題数にして数問程度多く正解できるかどうかが合否を分けるカギとなります。

過去問をどう活用すればいいかを考える上で、足切り(基準点)と合格点がどれぐらいの水準かを理解しておくことは重要です。

過去問何年分で本試験の問題をカバーできるか

試験問題は過去問と全く同じ問題が出題されるわけではないものの、同じ条文や判例をもとに出題されるものや、同じ論点を扱ったものなど過去問の知識があれば解答できる問題が一定数含まれます。

平成27年から令和元年の5年分の試験問題のうち、過去問の知識で解くことができる問題がどの程度含まれるかについて、択一式午前の部で35問中の3~5割、択一式午後の部で35問中5割前後であったというある予備校講師のデータがあります。

また、
遡って多くの年度の過去問を消化するほど、カバーする知識が増えることになります。

令和元年度択一式午前の部の問題が何年分の過去問で網羅されるかを調べたものでは、

  •  10年分の過去問で4割
  •  20年分で7割
  •  30年分で9割

といった数字もあげられています。

足切りを通過するのに6割、合格圏内に達するためには7割以上の正答が求められる司法書士試験において、過去問のみから学習では20年分以上の過去問に当たらなければならなくなり、受験対策としての効率的なやり方ではないことは明らかです。

法律系資格につきものの法改正への対処

法律系の資格試験で対応しなければならないのが法改正です。

法改正が司法書士試験の試験問題に影響するものは、近年だけでもこんなにあります。

年度
法改正
影響部分
2014
会社法改正
監査等委員会設置会社の創設 等
2015
商業登記規則改正
本人確認証明書
婚姻前の氏の記録の申出制度の創設
不動産登記令改正
会社法人等番号 等
2016
不動産登記法、商業登記法、供託法の改正施行
審査請求
2016
商業登記規則改正
株主リストの創設
2017
不動産登記規則改正
法定相続情報証明制度の創設
2017
刑法改正
性犯罪の重罰化 等
2018
供託規制
オンラインの代理権限証書
資格証明書の提示の省略
2018
商法改正
口語化、内容の一部改正

また、本年2020年度の司法書士試験では、2017年に改正され2020年4月1日から施行される改正民法が出題範囲に影響を与えると想定されています。

法改正によって、過去に出題された問題が、

①選択肢の正誤が変わるもの
②正誤が変わらないもの(正誤・根拠ともに変わらないもの、正解は変わらないが根拠が変わるもの)
③出題範囲から除外されるもの

に変わってしまうことが考えられます。

旧法では出題論点だったものが、改正により出題範囲から外れてしまう上記③のような問題については学習にかける時間が無駄です。

さらに、
①、②のような法改正の影響が及ぶ過去に出題された問題を特定し、正解がどう変わるのかを自分で調べるのは時間・労力に加えて、その判断が正しいかどうかというリスクも伴います。

法務省や受験予備校等のサイトから過去数年分の過去問を見ることができますが、法改正を考慮すると過去問のみを使った受験対策は非効率であると言えます。

試験対策のなかでの過去問の位置づけ

科目数が多く、すべてではないものの条文や判例の記憶まで必要となる司法書士試験は覚えなければならないことが膨大です。

一般的に、合格に必要な学習時間は3,000時間とも言われています。

過去問のみの学習は非効率であると述べましたが、特に頻出論点や重要な項目を網羅する厳選された市販の過去問集を何度も繰り返し解くことで、その膨大な法律に関わる知識を定着させていくという作業は欠かせないものとなってきます。

司法書士試験でどんな条文や判例をもとに、どういった問題形式で何が問われるのかという全体像を把握し、問われたことに解答する力をつけるという点でも過去問演習は必須と言えるでしょう。

合格者は過去10年程度の過去問について、どんな問題が出たかを覚えているぐらいの水準に結果として達している、という話も聞かれます。

初学者か多年度受験者か、受験予備校を使うか独学かなど、さまざまな受験者がいるなかで、共通している受験対策に必要な教材は以下のものです。

・出題される内容が網羅的にまとめられ、解説されたテキスト
・判例付きの六法
・法改正の影響を考慮し、アップデートされた最新年度の過去問集

出題内容の理解を助けるためにテキストは必要であり、個別の問題に関わる条文や判例を参照するために六法を使います。
判例に基づく問題もあるので六法は判例付きのものが適しています。

そして、
頻出論点や重要論点を網羅し、改正の影響を取り入れた、最新の過去問集を繰り返し解くことで知識の定着を図るというのが基本的な勉強方法です。

おすすめの過去問題集

司法書士試験のテキスト、問題集などの教材で受験生に多く使われているのが、大手資格受験予備校や、司法試験の受験支援を出発点とする受験予備校のものです。

前者では東京リーガルマインドや早稲田セミナー(TAC)、後者では伊藤塾、辰已法律研究所といったところが司法書士試験の教材として知られています。

それぞれの代表的な過去問集について紹介します。

東京リーガルマインド 2020年度版 司法書士 合格ゾーン 択一式過去問題集

・平成元年から平成31年まで30年分の過去問を収録
・問題ごとに過去の出題頻度により、A、B、Cの重要度ランクを表示
・問題ごとに2020年度の出題可能性が高いものを「要check」として表示
・各問題を知識型と推論型に区別

問題の構成は法律の体系別にまとめられ、独自に編集されたインデックスと出題年度・問題番号により、柔軟に活用できます。法改正にも対応した上で過去30年分の問題をカバーする網羅性の高さが特徴です。

ページ表に問題、裏面が解説になっており、使い勝手にも配慮されています。裏面の解説は図表なども取り入れた詳細なもので、論点の理解不足も補うことができます。

早稲田セミナー 山本浩司のautomasystem オートマ過去問

・関連する枝別にまとめられた枝別問題集
・セット問題、比較問題など関連した選択肢の正誤を検討することで論点の理解が深まる
・解答に必要な判例、先例を明示
・各問題のランク付けは、基本、頻出、応用として表示

LECの「合格ゾーン」とならんで「オートマ」と呼ばれる司法書士試験ではポピュラーな過去問集です。
枝別問題集と言われる選択肢の正誤を解説したもので、厳選した過去問の選択肢を法律の体系別にまとめることで合格に必要な基礎を効率的に学ぶことができます。

1ページあたり数問の選択肢と次ページにそれに対する正誤とが記載される形で、ポイントを絞った簡潔な解説が特徴です。

枝別問題集は5択の消去法で正解することはできず、枝ごとの正誤を個別に検討することを癖づけられるため、重要度の高い選択肢を重点的に解くことの効果は高いと言えます。

伊藤塾 司法書士過去問 民法 – 改正民法対応版(伊藤塾セレクション)

・11科目4分冊で問題数が1,000問以下と必要最低限の基本問題を厳選
・選ばれた過去問は科目毎に法律の体系にそって収録
・各問題のランク付けはA、B、Cで表示
・問題そのものの解説に加えた、近年の傾向など問題ごとのワンポイントアドバイス

伊藤塾は司法試験において受講者の高い合格率を誇り、司法書士のほかに、行政書士、公務員試験などの講座を開いています。

セレクションという名前のとおり、合格に必要な論点を含む過去問を網羅しながら問題の数を最小限に抑えた過去問集で、学習効率を高められるのが最大の特徴と言えます。

特に民法、商法・会社法など主要科目では基本となる論点を確実に解答できることが重要です。
それに対し、出題数が少ない科目は網羅的な学習が必要となってきます。

他の受験者が確実に得点している正答率の高い問題を取りこぼさない力をつけるのに適しています。

辰已法律研究所 <体系別>司法書士試験択一過去問本

・最新年度の過去問集は200部限定、本校窓口と公式サイトのオンライン販売のみ
・平成元年から令和元年までの問題に加え、昭和の重要選択肢を収録
・各科目ごとに法律体系別に編集
・B5版26穴の簡易製本で表に問題、裏に解説を記載
・各問題の重要度と難易度をA~Eで表示

司法試験の老舗予備校が作る司法書士試験の過去問集は、ルーズリーフの体裁を取る200部の限定販売です。

法改正にも対応した解説がつけられた上、30年分の過去問に加えて昭和の時代に出題された重要な枝問も収録しています。
論点の網羅性という点では他の過去問集とは一線を画しています。

体系別に編集されているので、テーマ別に解き進めることや、ルーズリーフをばらして、重要度別、難易度別、履修回数別など自由に分解して問題に取り組むことができるのも大きなメリットです。

過去問をどう取り入れてどう消化するか、自分の勉強法に適した過去問集を

過去問を繰り返し解くことで知識の定着を図ると述べましたが、一方で、テキスト中心の学習で合格した、受験勉強のなかで過去問に費やした時間のウェイトは大きくないといった人が少なくないのも事実です。

予備校利用者か独学かで勉強法は異なりますし、そのなかでの過去問の活用の仕方も、それぞれに考え方が違って然るべきでしょう。

市販の過去問集も、

  • 過去30年分を収録した網羅性を重視するもの
  • 頻出・重要論点に関わる問題を厳選したもの
  • 枝別過去問集

などと、それぞれの勉強法にあった選択肢があります 。

試験勉強に当てられる時間がどれくらいあるのか、自分にとってもっとも効果の高い勉強方法なのか・・
自分の学習レベルに合わせた解説のわかりやすさなど、過去問集の選び方、活用の仕方はさまざまです。

まずは、自分にあった過去問集を見つけることが第一歩です。