司法書士

司法書士とのダブルライセンスなら|行政書士と土地家屋調査士が有力

司法書士のWライセンス

司法書士は「街の法律家」と言われるように、法律に基づいた手続きを行う際、その書類作成や手続きを代行する法律の専門家です。

裁判所や法務局に提出する書類に関わる業務が、司法書士の独占業務です。

税理士や行政書士など法律に関連の深い他の士業にもそれぞれに独占業務があり、司法書士に加えて他の資格も取得することができれば、資格を活かした就職や独立開業を考える際に選択肢が広がります。

さらに、
ダブルライセンスを掲げることで、相乗効果的に司法書士としての活動の幅を広げることも可能。

一方で、複数資格を持ちながら実際には、一方の業務の割合がほとんど占めるケースや、もう一つの資格活かすことが現実的には難しいといったケースもあります。

複数資格を取得するための時間を含めた学習コスト、資格者として開業するための登録費用、勤務司法書士として他の事務所に雇用される場合や複数資格を持って活動する際の制限など、ダブルライセンスを活かせるかどうかの検討要素は多岐にわたります。

司法書士プラスアルファとして対象となる他の資格について、ダブルライセンスの可能性を見ていきましょう。

司法書士の仕事

司法書士の独占業務

国家資格である司法書士は不動産登記や商業・法人登記などの登記業務のほか、成年後見業務、債務整理など。

また、認定司法書士は簡易裁判所における代理人、差押などの保全手続き、建物明け渡しなどの申立書類の作成・・・
といった法務局や裁判所、検察庁に提出する書類の作成と代理業務を行うことができます。

司法書士は行政書士のように他の資格を保有していれば司法書士として登録可能となる上位の資格はありません。

しかし、
弁護士も司法書士の独占業務である登記を行うことができるとされているため、司法書士のみができる独占業務ということではありません。

司法書士事務所の経営実態

「司法書士白書(2012)-司法書士全国調査」によると、
司法書士事務所の経営形態は86.1%(2,506/2,910名)が個人経営です。

それ以外は、
共同事務所経営-7.5%、司法書士法人に勤務-5.2%、弁護士法人や弁護士事務所に雇用されるケースが1.3%となっています。

また、勤務事務所で自分を除いた司法書士以外の資格で業務を行っている人がいる割合は13.7%(397/2,897名)で、さらに、その13.7%にあたる397名の内訳は以下の通りです。

  • 行政書士 ー 52.8%(210/397名)
  • 土地家屋調査士 ー 52.1%
  • 税理士 ー 6.5%
  • 社会保険労務士 ー 5.8%
  • 弁護士 ー 4.5%
  • 公認会計士 ー 1.8%
  • 不動産鑑定士 ー 1.3%
  • 弁理士 ー 0.3%

その他として、社会福祉士、測量士、マンション管理士、建築士、海事代理士などがあげられています。

8割以上の司法書士が個人経営の事務所で活動を行っており、それに共同事務所経営を加えると9割を超えます。

ダブルライセンスとして司法書士プラスアルファの資格を考える際、上記にあげられた資格は関連性の高い資格と言えます。

特に、行政書士、土地家屋調査士は同じ事務所に居を構えて営業している割合が、この調査結果ではともに共同経営事務所の半数を超えています。

司法書士とこれらの資格を保有していれば、この2つの資格保有者と連携して行う案件を自分一人でこなすことができるので仕事の幅が広がります。

ダブルライセンスの対象となる他の資格

行政書士

まちなかで「〇〇司法書士行政書士事務所」といった2つの資格の名称を掲げた看板をよく見かけます。

上の調査結果でも裏付けられるとおり、行政書士は司法書士との関連性が高い資格です。

行政書士が作成できる書類は膨大な数にのぼり、行政書士が独占的に行う業務と、弁護士をはじめとして、司法書士や社会保険労務士、税理士など他の法律資格者も扱うことができる法定業務に大別できます。

行政書士の独占業務

行政書士の独占業務については行政書士法第1条で、官公署に提出する書類と、権利義務又は、事実証明に関する書類の作成をその業務内容と定めており、行政書士法第19条で行政書士でないものがこれらの業務を行うことが禁じられています。

それぞれ代表的なものは以下の通りです。

①官公署に提出する書類
・開発行為許可申請
・農地転用許可申請
・建設工事等入札資格審査申請
・古物商許可申請など許認可の申請
・在留資格申請

②権利義務に関する書類の作成
・売買、抵当権設定、身元保証、示談などの契約書
・契約申込書、請求書など
・就業規則、定款などの約款

③事実証明に関する書類
・パスポート認証、資格証明書、自動車登録事項証明書など証明書
・財務諸表、商業帳簿などの会計書類
・図面など事実証明に関する書類

なお、
弁護士、公認会計士、税理士資格を持っていれば行政書士として登録できるので、これらの士業として看板を掲げている事務所と競合することもあり得ます。

司法書士 ✕ 行政書士 ダブルライセンスのメリット

司法書士、行政書士のダブルライセンスを持っている人は両方に登録している人がほとんどであり、両者が連携して行う必要がある案件をひとりで行うことができることが大きなメリットになります。

例えば、
会社の立ち上げに必要となる定款の作成は司法書士、行政書士ともに行うことができる業務です。

さらに、
会社の登記は司法書士として行い、許認可が必要な業種の場合は行政書士として申請業務を行えば、「クライアントの起業」という案件に対して司法書士と行政書士のサービスをワンストップで行うことが可能になります。

同様の例として、農地の転用や相続といった案件の場合に、
「農業委員会への届出」
という行政書士の独占業務と
「不動産の登記」
という司法書士の独占業務、これらの双方をひとりで行うことが可能です。

行政書士に認められた書類作成の業務は10,000以上あると言われ、業務分野が広範囲に渡るのが特徴です。

そのなかの登記が必要となる案件に関して、司法書士と行政書士それぞれの独占業務の壁を超えてできるという点で、行政書士は司法書士とのダブルライセンスの相性が良い資格です。

土地家屋調査士

土地家屋調査士は不動産登記の専門家です。
司法書士が行う登記業務は、所有権、抵当権、貸借権などの権利に関するものであるのに対し、土地家屋調査士は所在地、用途、面積など表示に関する登記を行います。

司法書士が行う権利に関する登記は弁護士も行うことができますが、表示に関する登記を他の士業が行うことはできず、土地家屋調査士のみに認められた独占業務です。

土地家屋調査士は、土地や建物に関する測量を含めた調査を現地に赴いて行います。

このため土地家屋調査士試験では民法や登記手続きなどの知識に加え、測量の技術や図面の作図の技能も問われることになります。

司法書士 ✕ 土地家屋調査士 ダブルライセンスのメリット

司法書士が行う土地建物の取引や相続など権利の移動や変更に関する登記の前提として、権利の対象となる不動産の物理的な状況を明確にするための表示に関する登記を行うのが土地家屋調査士です。

前述の調査結果で見たとおり、司法書士と土地家屋調査士の共同経営事務所が多いことは不動産の登記をメインの業務としている司法書士にとっては必然的なことと言えます。

実際に、この組み合わせのダブルライセンスホルダーも多く、土地家屋調査士の資格試験のハードルも他の資格と比べると低いことから、行政書士とともに司法書士のダブルライセンスとして相性の良い資格です。

ただ、
現地での測量という業務があり、それを行うための設備機器のための数百万といった設備投資が必要であることを考えておかなければなりません。

宅地建物取引士

宅地建物、いわゆる不動産の取引は権利関係や取引条件が複雑で、法令上の制限も多く、取引価格は高額になります。

そのため購入者や借主を保護することを目的に不動産の売買にあたっては、宅地建物取引士が契約内容の重要事項を説明し、重要事項説明書と契約書への記名・押印をすることが義務付けられています。

取引された不動産の登記を行うのが司法書士ですから、司法書士✕宅地建物取引士の資格があれば、

  1. 自ら宅地建物取引士として不動産取引をまとめる
  2. その登記まで行うことができる

という訳で、不動産購入者に対するワンストップサービスが可能となります。

しかし、
実際には司法書士法、宅地建物取引業法双方の制約があり、兼業しているケースは限られています。

専任の宅建士として宅建業を開業するためには、特定の場所に勤務していることと、その業務に専従しているという専任制が求められます。

他の法人や公務員、パート、アルバイトなどの勤務者として兼業することはできません。

また、宅地建物取引士である不動産会社代表者が司法書士資格を取得した場合、会社法により、司法書士法人でない会社が司法書士業務を会社の目的として登記することはできないため、兼業はできないことになります。

また、司法書士法人は直接無限責任であるため、業務として不動産取引を行うことは現実的ではありません。

個人経営を行う司法書士の場合は、宅地建物取引士としての専任性が認められるかどうかは都道府県によって対応が異なっています。

同様に司法書士連合会への登録に際しても不動産業との兼業が認められるかどうかは地域の司法書士会に照会するのが適切な方法です。

実際には司法書士が宅地建物取引士の資格を得て不動産業を行っている例もあるようです。

司法書士 ✕ 宅地建物取引士 ダブルライセンスのメリット

実際に両者の看板を掲げて開業するということについて制約があるということは前述のとおり。

ですが、
不動産業界をドメインとして司法書士資格の活用を考える場合には、取引の結果としての登記の部分以前の不動産取引の知識や実務経験があることは不動産登記の業務を行っていく上で大きなアドバンテージになります。

宅地建物取引士は「法律系資格の登竜門」と言われ、宅地建物取引士の資格で不動産業界で経験を積んだ後に、司法書士にステップアップするといったキャリア形成たどる方も少なくありません。

上記以外のダブルライセンスの対象となる資格

司法書士の業務範囲は不動産、商業・法人登記をメインに成年後見人や財産管理人などの財産管理業務や企業法務、多重債務者問題や生活困窮者支援など対人支援・人権擁護といった分野にまで広がりを見せています。

これらの業務の顧客となるのは各種金融機関や不動産業者、企業、個人などです。

それぞれの顧客対象と接点を持つ中で司法書士以外の業務の受任に広がりを持つ資格が司法書士と相性のよいものと言えます。

もともと法律系資格には、単に書類の作成や各種申請の代理といった業務の前提として、
「クライアントからの相談に応える」
「問題を解決する」
といった要素が多分に含まれます。

当然、定められた業務範囲によりケースによっては他の士業への依頼や紹介を行わなければならないこともありますが、司法書士の業務を起点として他の分野の資格や業務知識、実務経験をカバーすることは、顧客からのコンサルティングニーズに幅広く対応できることにつながります。

社会保険労務士

社会保険労務士は労働・社会保険関連の行政手続きや企業の労務管理や社会保険関係の相談・指導を行うことができます。

社会保険労務士と司法書士の業務範囲がオーバーラップするのは企業法務関連、相続関連の分野です。

新たな会社の起業に際し登記の部分は司法書士として、社会保険労務士として人事・労務についての相談から就業規則などの作成、給与計算まで引き受けることができれば1つの企業の幅広い法務ニーズを満たすことができます。

相続分野では、少子高齢化を背景に代替わりを迎える中小企業が激増しているなかで、相続に関連する登記業務は司法書士のテリトリーであり、年金分野は社会保険労務士の担当分野として中小企業の事業承継に深く関わっていくことが可能となります。

中小企業診断士

中小企業診断士は企業の経営全般に精通する経営コンサルティングのスペシャリストと言えます。

独占業務はなく経営コンサルタントとしての活動にこの資格が必要なわけではありませんが、国の中小企業施策に深く関わる形で中小企業経営の体系的な知識を有している専門家であることはこの資格の大きな強みです。

企業法務の枠を超えて、資本政策やマーケティングなど、クライアントの本業に関わる部分を見据えたアドバイスができれば、競合と大きな差別化を図ることができるでしょう。

FP(ファイナンシャルプランナー)

FPは家計管理や資産形成、老後資金、保険、税金、相続・譲与など、主に個人を顧客対象としてその生活に深く関わる「お金」に関するアドバイスを行います。

住宅など不動産の取得や売却を含めた資産形成、相続などの分野で司法書士、FPそれぞれの強みを活かしたコンサルティングは顧客からの大きな信頼につながります。

資格取得後の将来像を明確にした上で複数資格を活かす

司法書士を起点にダブルライセンスを目指すには・・・
組み合わせる資格がどんな分野の業務に関わり、どういった顧客対象をメインとしていくかを思い描くことが重要です。

また、
士業全般に共通しますが、開業地、「就職地が大都市か地方か」
という点が業務分野や受注環境に大きく影響することも考慮すべきでしょう。

その上でダブルライセンスは選択肢を増やすことにつながるのは確実ですし、強みになっていきます。

価値のあるダブルライセンスに是非チャレンジしてみてください。