今回は行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスについての記事です。
土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記の申請代行を行うプロフェッショナルで、土地や建物の調査・測量も行います。
行政書士の主な業務に許認可申請がありますが、正しく測量した図面を添付しなければならない場面も少なくありません。
つまり、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスには、大きな相乗効果があるのです。
ただし、行政書士と土地家屋調査士、どちらも資格を取るまで長時間かかる、非常に難関な国家資格です。そのため、ダブルライセンスを狙うかどうかは、慎重に考える必要があります。
この記事では、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスについて、具体的なメリットなど、くわしく説明していきます。よろしければ読んでみてください。
行政書士と土地家屋調査士の業務内容の違い
行政書士と土地家屋調査士は、両方とも書類の作成をサポートする国家資格です。
行政書士や司法書士と比べてみると、土地家屋調査士の知名度はあまり高くありません。
しかし、土地家屋調査士の取り扱っている仕事内容は、私たちの身近な生活と深い関わりがありますよ。
以下では、行政書士と土地家屋調査士の業務内容にどのような違いがあるのかまとめてみました。
- 行政書士はお客様に代わり、官公署に提出する書類の作成や手続きを行う(飲食店営業許可申請書や建設業許可申請書など)、その他に権利義務や事実証明に関する書類作成代行など
- 土地家屋調査士は不動産の表示に関する登記と土地の筆界の専門家で、法務局に対して代理で書類の作成提出ができる
簡単に説明すると、行政書士が官公署に提出する書類を作成するのに対して、土地家屋調査士は不動産登記の表示に関する登記を依頼者の代わりに申請します。
どちらの書類の提出も、顧客が自分で手続きを行うのは不可能ではありません。
ただし、高度な法律知識が求められますので、専門家の行政書士や土地家屋調査士に依頼した方が良いわけです。
行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスをおすすめする理由はこれだ!
国家資格の中には、2つの資格を組み合わせると強力な武器になるものがあります。
その代表的な例が行政書士と土地家屋調査士で、2つの資格を保有するダブルライセンス者は増えました。
行政書士も土地家屋調査士も簡単に合格できる試験ではないものの、日々の仕事で役立てるためにダブルライセンスを目指すのは選択肢の一つですね。
ここでは行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスをおすすめする理由を解説していますので、これから試験勉強を始める方は参考にしてみてください。
試験範囲で被る部分がある
「業務内容を見てみると行政書士と土地家屋調査士に関わりはないのでは?」とイメージしている方は少なくありません。
しかし、行政書士と土地家屋調査士では、試験範囲で被る部分があります。
まずは行政書士と土地家屋調査士のそれぞれの試験科目について見ていきましょう。
<行政書士の試験科目>
- 法令等:「基礎法学」「憲法」「民法」「行政法」「商法」
- 一般知識等:「政治・経済・社会」「情報通信・個人情報保護」「文章理解」
<土地家屋調査士の試験科目>
- 午前の部:平面測量10問/作図1問
- 午後の部:不動産の表示に関する登記(不動産登記法/民法他)
民法の中の、「代理権」「不動産物権の対抗要件」「相続」は試験範囲が被っています。
どちらの資格も民法に関する知識が必要不可欠ですので、行政書士の勉強は土地家屋調査士の試験に、土地家屋調査士の勉強は行政書士の試験に役立つわけです。
被っている試験範囲は限られていますが、土地家屋調査士試験においては、今後更に広い範囲の民法に関する出題が増えるのではないかと予想されています。
行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスを狙う方は、他の受験生と比べて試験を有利に進めることができるのです。
いくつかの業務をワンストップで受注可能
行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスがおすすめなのは、2つの資格で活躍できる業務がいくつかあるからです。
例えば、行政書士が取り扱う業務の中でも、次の3つは土地家屋調査士の業務とも関連性があります。
- 農地転用が発生する場合の測量や登記
- 開発許可申請を行う場合の測量
- 風俗営業許可申請を行う場合の測量や図面作成
依頼者側の立場に立ってみると、本来であれば別々の専門家に相談しないといけません。
もし行政書士と土地家屋調査士の両方の資格を取得してダブルライセンスになっていれば、これらの業務をセットで(ワンストップで)受注可能です。
クライアントの満足度も高くなりますので、複数の資格を組み合わせたダブルライセンスは効果的ですよ。
独立開業する際に役立つ
行政書士は法律系の国家資格、土地家屋調査士は不動産系の国家資格です。
2つとも資格の保有者にしかできない独占業務が設定されていますので、ダブルライセンスになれば独立開業する際に役立ちます。
「行政書士だけ」「土地家屋調査士だけ」だと、他の有資格者と差別化を図ることはできません。
独立開業で利益をしっかりと出すには、顧客やクライアントを確保するのが第一です。
行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスで業務の幅が広がれば、「顧客からの依頼が増える」⇒「収入がアップする」⇒「独立して成功する」と繋げられます。
行政書士会や日本土地家屋調査士会連合会に登録している人の多くは独立開業をしていますが、差別化のためにも、関連する資格を複数取得するのはおすすめですよ。
行政書士と土地家屋調査士の試験の難易度を合格率で比較!
ダブルライセンスを目指すに当たり、試験の難易度や合格率は気になるところです。
いくらダブルライセンスが業務で役立つとは言っても、あまりにも合格率が低いと「自分に取得できるの?」と不安になります。
そこで、ここでは行政書士と土地家屋調査士の難易度がどのくらい高いのか、試験の合格率で比較してみました。
試験年度 | 行政書士の合格率 | 土地家屋調査士の合格率 |
---|---|---|
平成22年度 | 6.60% | 8.35% |
平成23年度 | 8.05% | 7.71% |
平成24年度 | 9.19% | 8.38% |
平成25年度 | 10.10% | 8.77% |
平成26年度 | 8.27% | 8.82% |
平成27年度 | 13.1% | 8.82% |
平成28年度 | 9.95% | 8.92% |
平成29年度 | 15.7% | 8.69% |
平成30年度 | 12.7% | 9.54% |
一昔前までは、行政書士と土地家屋調査士の試験の合格率は同じくらいでした。
しかし、近年では行政書士よりも土地家屋調査士の方が合格率が低いことがわかります。
平成10年以前は土地家屋調査士の合格率は3%前後だった時期もありますので、今は大分易しくなったものの、それでも難しい試験という点では変わりありません。
なぜ土地家屋調査士の試験が難しいのか、考えられる理由をいくつか見ていきましょう。
- 択一式問題の民法や不動産登記法、書式問題の製図を含む土地と建物は高度な知識を要求される
- 不動産登記で実務上の運用を書き記した先例は、量が多くて縦断的かつ横断的な知識が必要
- トータルで合格基準をクリアするだけではなく、択一式問題と書式問題の両方で足切り点がある
もちろん、行政書士の試験も決して簡単なレベルではありませんので、きちんと対策する必要があります。
※行政書士の難易度については、下記の記事も参考にしてください。
行政書士と土地家屋調査士の資格を取得するまでの勉強時間で比較!
行政書士と土地家屋調査士を比較してみると、資格を取得するまでの勉強時間に差があります。
あくまでも目安ですので一概には説明できませんが、行政書士試験に合格するまでは約500時間~800時間の勉強が必要なのに対して、土地家屋調査士は1,400時間~1,700時間です。
以下では、行政書士と土地家屋調査士だけではなく、他の資格も合わせて勉強時間や学習期間を比較してみました。
国家資格 | 学習期間 | 難易度 |
---|---|---|
税理士・公認会計士 | 1日3時間の勉強で数年以上 | ★★★★★★★★★ |
不動産鑑定士 | 1日3時間の勉強で2年~3年 | ★★★★★★★★☆ |
土地家屋調査士 | 1日3時間の勉強で1年~2年 | ★★★★★★★☆☆ |
中小企業診断士 | 1日2時間の勉強で1年~2年 | ★★★★★★☆☆☆ |
行政書士 | 1日2時間の勉強で8か月~1年半 | ★★★★★☆☆☆☆ |
マンション管理士 | 1日1時間の勉強で半年~1年 | ★★★★☆☆☆☆☆ |
管理業務主任者 | 1日1時間の勉強で3ヵ月~9ヵ月 | ★★★☆☆☆☆☆☆ |
FP2級 | 1日1時間の勉強で3ヵ月~6ヵ月 | ★★★☆☆☆☆☆☆ |
税理士や公認会計士ほどではないにしても、土地家屋調査士と行政書士は難易度がかなり高い国家資格です。
もしダブルライセンスを目指すのであれば、それなりに長い勉強時間を費やさないといけません。
独学だと目安以上に時間がかかる恐れがありますので、確実に行政書士と土地家屋調査士の試験に合格してダブルライセンスになりたいのであれば、予備校や通信講座を利用してみてください。
※行政書士の勉強時間については、下記の記事も参考にしてください。
行政書士と土地家屋調査士を兼業しても大丈夫なの?
行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスを目指すに当たり、兼業しても大丈夫なのか気になるところですよね。
行政書士の中には、スキルアップが目的で土地家屋調査士の資格も取得している方はたくさんいます。
「兼業してはダメ」という規定は特にありませんので、2つの資格を活かした業務を顧客に提供することは可能です。
依頼者側の立場に立ってみると、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスの事務所に相談した方が、低コストかつスピーディーに業務が進む可能性が高いと感じるはずです。
2つの事務所を行き来する必要がなくなりますので、ダブルライセンスだと顧客をしっかりと確保できるわけです。
とは言え、「専業事務所よりも兼業事務所の方が偉い」といったことは一切ありません。
「何もかもできます!」と掲げている事務所よりも、「○○○ならお任せください!」という事務所の方が信頼できます。
国家資格は取得している数に比例して効果が高まる単純な話ではありませんので、自分の仕事と照らし合わせてどの資格を目指すべきなのか考えてみてください。
まとめ
以上のように、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスがおすすめの理由、試験の難易度や勉強時間についてまとめてみました。
行政書士と土地家屋調査士の2つの資格を持っていると、関連する業務をワンストップでこなせるようになります。
顧客やクライアントの満足度を高めることができますので、予備校や通信講座を利用して行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスを目指してみてはいかがでしょうか。
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ここまで、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスについてお伝えしました。
行政書士のダブルライセンス全般については、下記記事を参考にしてください。
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この記事の監修者 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |