行政書士の試験は、試験範囲が広く、かつ難易度が高い試験です。
そのため、特に初めて学習する方は
「合格するまで、何時間ぐらい勉強が必要なのだろうか?」
と考えてしまいますよね。
結論から言うと、目安となる勉強時間は以下のとおりです。
- 独学で行政書士の試験に合格するまでは600時間~800時間
- 予備校や通信講座の利用で行政書士の試験に合格するまでは500時間
さらに、この記事では
「行政書士の試験科目は、どのような順番で勉強すれば良いのか」
「行政書士の勉強は、いつ頃始めるのがよいのか」
などについても、お伝えします。
これから行政書士の資格を取りたい、と考えている方には、参考にして欲しいと思います。
行政書士の試験に合格するまでの勉強時間は?
勉強時間を他の資格試験(国家資格)と比較してみる
まず、どのぐらいの勉強時間が必要なのか、他の関係の深い難関国家資格(資格試験)と比較しながら見てみましょう。
- 予備試験(司法試験):約6,000時間
- 社労士:約1,000時間
- 行政書士:約500~800時間
- 宅建士:約400時間
行政書士は「法律系試験の登竜門」と言われることもありますから、弁護士や司法書士と比べてみると、確かに短時間で合格できそうです。
とは言え、500時間~800時間と言えば、1日3時間勉強するとして、5か月~8か月かかることになります。決して易しい試験ではありません。
行政書士試験 独学か通学・通信かどうかで必要な勉強時間は変わる
初学者が行政書士試験に挑戦する場合、前述のとおり、独学なのか予備校(通学または通信講座)を利用するのかで勉強時間の目安は変わります。
- 独学の場合:600時間~800時間が目安
- スクールへの通学または通信講座:500時間が目安
独学の場合だと、テキスト選びから自分で行う必要がありますし、「自分の選んだ道がベスト」という保証はないわけです。いや、むしろ回り道したり試行錯誤で学習するので、時間が掛かってしまうわけですね。
一方の通学や通信では、講師の分かりやすい講義や解説を聴けますし(通信の場合は講義動画)、実績のあるカリキュラムを使えるので、受験性は安心して最短コースを進めるわけです。
法学の基礎知識の有無による、行政書士の試験に合格するまでの勉強時間
行政書士の試験に合格するまでの勉強時間は、法律に関する基礎知識の有無でも変わります。
法学部出身者や法律系国家資格(資格試験)取得者(例:宅建士)など、ある程度法律に精通している方であれば、独学でも500時間くらいの勉強時間で合格できる可能性はあるでしょう。
しかし、全くの初学者や法律未経験者が知識ゼロで行政書士の資格を取得する場合、予備校や通信講座を利用して、ようやく同じぐらい(500時間)の時間と考えられます。
独学ではもっと長い勉強が必要になりますので、多くの方は予備校や通信講座を利用しているわけです。
以下では、行政書士試験を独学で取り組む上で押さえておきたいデメリットをまとめてみました。
- 勉強時間が増えるほど、合格までにかかる期間も長くなる
- 時間をかけて勉強しても、やり方が間違っていると合格できない
- 年数がかかるほど教材費などの費用の負担が大きくなる
- 勉強のスケジュール管理を全て自分でこなさないといけない
- 自力で勉強の質と効率を上げる必要性がある
様々な点を加味すると、法学部未経験者は特に予備校や通信講座で行政書士の合格を目指すべきです。
予備校の場合はスケジュール管理はお任せしておけば大丈夫ですし、通信講座でも勉強のスケジュール管理をサポートする機能を持つ講座はありますで、「絶対に行政書士に合格したい!」という方は検討してみましょう。
行政書士の科目ごとの勉強時間の目安
行政書士の試験範囲は幅広いため、合格するには効率良く勉強するのがポイントです。
科目ごとの勉強時間を考えるにあたり、もっとも重要なのは各科目の配点です。
以下に、法令等科目と一般知識等科目の細かい試験科目や出題数、配点についてまとめてみました。
行政書士試験 科目ごとの出題数・配点、合格基準や足切りについて
- 基礎法学(2問):8点
- 憲法(6問):28点
- 民法(11問):76点
- 行政法(22問):112点
- 商法(5問):20点
- 政治・経済・社会(7問):28点
- 情報通信・個人情報保護(4問):16点
- 文章理解(3問):12点
行政書士試験は300点満点で、合格基準は60%(180点)です。その他、「法令等科目の得点が満点の50%以上」「一般知識等科目の得点が満点の40%以上」という足切りの規定があります。
行政書士の勉強時間の大半は「行政法」と「民法」に費やす
この合格基準を頭に入れたうえで各科目の配点を見て頂くと、あることに気づくと思います。それは
- 「行政法」と「民法」の配点が圧倒的に大きく、この2科目だけで合格基準点の180点以上の配点がある
ということです。
そのため、科目別の勉強時間においても、「行政法」「民法」に大きく時間を割くべきです。
たとえば、全体の勉強時間を600時間とする場合、「行政法」「民法」で350~400時間(全体の60%)程度は費やすべきです。
そして、次に配点の高い「憲法」に80時間、その他の「基礎法学」「商法・会社法」「一般知識」で70時間程度、総まとめ等で50~100時間程度が目安となるでしょう。
行政書士試験 科目ごとの勉強方法のポイント
以下、行政書士の科目ごとの学習方法や取り組み方についてまとめてみました。
- 民法:知識だけでは解けない事例問題形式が出題される傾向があるため、過去問対策だけではなく知識を使いこなせるレベルまで理解度を高める
- 憲法:過去問の出題傾向を分析し、試験に出やすい頻出の分野を集中的にカバーして勉強に取り組む
- 基礎法学:法律的な文章を理解したり表現したりする力を身につける分野なので、過去問を早めに確認して準備する
- 行政法:「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」などの条文をしっかりと読み込んで知識を暗記する
- 商法:配点が20点と低いため捨てる人が多いが、易しい問題が出題されやすいため、過去問対策で得点を拾う
- 一般知識:早めに過去問をチェックしてコツコツと取り組み、模試で実践トレーニングを積んで対策する
前述の表のとおり、行政書士の試験の配点は、法令科目が244点、一般知識等が56点でトータル300点になっています。
一般知識等は足切りだけには注意し、法令科目は「行政法」「民法」を徹底的に攻略することを忘れないでください。
人によって理解度や進捗度合いは変わりますが、「1日に○ページのテキストを読む」「1日に過去問を○問解く」など、ノルマを決めて行政書士試験の勉強を継続しましょう。
その他、詳しい勉強方法については、下記の記事を参考にしてください。
行政書士の勉強時間 最短合格の勉強時間では250時間?
それでは、行政書士試験は最短どのぐらいの勉強時間で合格できるのでしょうか?
あくまで私の観測範囲の中ですが、知人で10月に入ってから試験勉強を始めて11月の試験に合格した人の話を紹介します。
さすがに平日は5時間、土日も10時間以上は勉強時間を確保したそうです(その間、仕事はしていませんでした)。
正味の勉強時間を聞くと、「250時間ぐらい」とのことでした。
ただ、この方は、もともと宅建の資格を持っており、行政書士と被る民法においては最初から多くの知識をお持ちでした。
それゆえに、短時間でスムーズにストレート合格できたのだと思います。
やはり、何か専門分野がある方は強いですよね。
また、具体的な勉強法ですが、通信講座の講師の講義の解説を1.5倍速で2回まわして、あとはひたすら過去を解いていたそうです。
この例があなたの参考になるかどうか分かりませんが、時間がない中で自分を追い込むことは、確かに短期合格の一つの手法かと思います。
ちなみに彼は合格後に開業し、現在はバリバリ活躍しています。やはり様々なことを効率化することが得意な方だったのかも知れませんね。
行政書士の勉強の開始時期はいつが良い?
行政書士の試験は1年間に1回しかありませんので、チャンスを逃すともう1年待たないといけません。
かと言って2ヵ月や3ヵ月の追い込みで合格するのは難しい試験ですので、行政書士の勉強の開始時期は意外と大事です。
例えば、法律の知識をある程度持っている方で500時間の勉強で合格できると思った場合、1日に1時間の勉強で約16ヵ月、1日3時間の勉強で5ヵ月~6ヵ月の期間がかかります。
行政書士の試験は毎年11月の第2週の日曜日に実施されますので、1日3時間のペースであれば5月頃が勉強の開始時期です。
ただし、行政書士の試験を勉強していく上で、下記のように様々なトラブルが引き起こされると予想されます。
- 普段の仕事が忙しくてどうしても行政書士の勉強に手を付けられない
- 病気を患って数日間に渡って寝込んでしまった
あまりにも勉強スケジュールを詰め込み過ぎていると軌道修正が難しいため、余裕を持って行政書士の勉強を始めるのが良いでしょう。
行政書士の試験の勉強する順番
行政書士の試験勉強は、順番や取り組み方で効率を上げられます。
効率の悪い方法で勉強していると、予想以上に時間がかかりますので注意しないといけません。
ここでは行政書士の試験の勉強する順番を説明していますので、是非一度参考にしてみてください。
法令科目と一般知識等を並行して勉強する
行政書士の試験科目は、次のように法令科目と一般知識等の大きく2つにわかれています。
- 法令科目:「憲法」「民法」「商法」「行政法」「基礎法学」
- 一般知識等:「政治」「経済」「社会」「情報通信」「個人情報保護」「文章理解」
法令科目の方が配点が多いため、「一般知識等の勉強は後回し」というやり方で勉強している方は少なくありません。
しかし、一般知識等の勉強が不十分なまま試験を受ける状態に陥る受験者は多いので、法令科目と並行して勉強するのがポイントです。
かける時間は法令科目を長くしてOKですが、一般知識等も合わせて学習しましょう。
身近な法律の民法からスタートする
法律に慣れていない初学者にとって、憲法や行政法は取っ付き難いですよね。
そこで、行政書士の試験勉強は身近な法律の民法からスタートしましょう。
民法とは個人と個人の関係を決めている法律で、「お金を借りた時の利息の決め方」や「何歳から結婚できるのか?」など、私たちの日常生活に関わる出来事のルールが中心です。
いきなり他の科目から勉強すると訳がわからなくなって挫折しやすいため、「最初に民法を学習する」⇒「憲法や行政法などの他の分野を勉強する」という順番が適しています。
法令科目は、下記のとおり学習に取り組んでみてください。
- 身近な法律の民法について学習する
- 全ての法律の基本になる憲法を学ぶ
- 得点源の行政法の知識を身につける
- 商法と会社法はポイントをおさえる
- 基礎法学はさらっと学習する
上記の法令科目の合間に、一般知識もバランス良く進めることがおすすめです。
択一式や選択式の知識を習得してから記述式を勉強する
行政書士の試験では、次の3つの形式の問題が出題されます。
- 複数の選択肢から正しい答えを選ぶ「択一式」
- 複数の選択肢から正しいものや誤っているものを選ぶ「選択式」
- 問題として提示された事例に対して40文字程度にまとめて回答する「記述式」
民法と行政法では記述式問題が出題されますが、まずは択一式や選択式の知識を習得することから始めましょう。
択一式や選択式の知識を自分の頭で組み立てられるようになってから記述式の問題の勉強を行うのが効率的です。
行政書士試験の合格率 最近の傾向
前述のとおり、行政書士試験には500~800時間程度の勉強時間が必要となります。
長期間の勉強が必要な試験ですから、試験の合格率も気になりますよね。
ここでは、行政書士の合格率について、最近の傾向について確認しておきましょう。
以下に、行政書士試験の受験者数や合格率のデータを年度別にまとめました。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
平成22年度 | 70,586名 | 4,662名 | 6.60% |
平成23年度 | 66,297名 | 5,337名 | 8.05% |
平成24年度 | 59,948名 | 5,508名 | 9.19% |
平成25年度 | 55,436名 | 5,597名 | 10.10% |
平成26年度 | 48,869名 | 4,043名 | 8.27% |
平成27年度 | 44,366名 | 5,820名 | 13.1% |
平成28年度 | 41,053名 | 4,084名 | 9.95% |
平成29年度 | 40,449名 | 6,360名 | 15.7% |
平成30年度 | 39,105名 | 4,968名 | 12.7% |
上記のデータを見てみると、最近では、行政書士の試験の合格率が上昇している代わりに、受験者数が減少している傾向にあるのが分かります。
以前は1桁代の合格率が多かったのですが、ここ数年の合格率は10%を超えて推移しています。
一方、受験者数はピークよりも3万人程度減っています。
以上から「受験者数が減少したので、合格率は上がった」と言えそうですが、話はそう簡単ではありません。
近年では「行政書士試験問題の難化」が指摘されており、合格率が上がった要因としては、以下のようなことが考えられます。
- 試験問題難化のため、受験を諦める方が増加した
- 受験生全体のレベルが上がった
つまり、決して「最近は合格率が上がっているから、行政書士試験は受かりやすくなっている」わけではありません。
むしろ、試験の難易度が上がっているため、気を抜かずに勉強することが必要です。
とはいえ、合計180点を獲得し、足切りに該当しなければ確実に合格できますので、貴重な勉強時間を有意義に使い、知識を確実に定着させてほしいと思います。
行政書士試験の日程や受験手続の流れ ~行政書士試験合格に必要な期間は?
行政書士試験の勉強時間・勉強開始時期などを検討するためには、試験日程を押さえておく必要があります。
ここでは、試験日程や受験手続の流れ、試験案内の入手時期などについて確認しておきましょう。
行政書士試験の受験日や受験料
受験日時や費用に関する規定は次のとおりです。
試験日:毎年11月の第2日曜日(毎年1回)
時間帯:午後1時~午後4時まで
受験料:10,400円
1年間に1回しか実施されていない試験ですので、合格するには前もってしっかりと準備するのが大事です。
行政書士試験の受験手続きの流れ
以下では、受験手続きの方法や流れについてまとめてみました。
- 試験案内の掲載・配布(7月第2週頃よりWebサイトで公開)
- 受験申込みの受付(願書および本人画像をアップ)
- 受験票の送付(例年10月中下旬)
- 試験の実施(例年11月第2日曜日)
- 試験結果発表および合否通知書の送付
- 合格証を受験生に送付(毎年2月中~下旬)
受験手続きについては、インターネットまたは郵送で受付を行っています。詳細は一般財団法人行政書士試験研究センターのWebサイトをご覧になってください。
参考:https://gyosei-shiken.or.jp/doc/abstract/flow.html
まとめ
以上のように、行政書士の試験に合格するまでに長い勉強時間を費やさないといけないことがおわかり頂けたのではないでしょうか。
独学なのか通信講座を利用するのかで違いはありますが、根気良く勉強に取り組むのが行政書士合格のコツです。
行政書士試験では記述式問題も出題されますが、基本的には出題範囲の法令を理解して覚えておけば合格できる試験です。
ただ闇雲に取り組んでいても合格には近付きませんので、勉強スケジュールを決めたり勉強する順番を考慮したりして、確実に知識を自分のものにしてください。
この記事の監修者 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |