Wライセンスのコラム

行政書士と司法書士の難易度の違いは?ダブルライセンスはおすすめ?

行政書士と司法書士のダブルライセンス

今回は行政書士と司法書士のダブルライセンスについての記事です。

司法書士は不動産や会社の登記の申請代行を行うプロフェッショナルで、供託に関する手続きの代理や簡易裁判所での代理人業務も行います。

行政書士の主な業務に許認可申請がありますが、登記を代行することは認められていません(司法書士の独占業務)。

もし、行政書士と司法書士のダブルライセンスがあれば、

顧客の会社設立にあたり、許認可申請から会社設立登記までワンストップで提供できるなど、大きな相乗効果があるのです。

ただし、行政書士と司法書士、いずれも取得までに時間のかかる難易度の高い試験のため、ダブルライセンスを狙うかどうかは慎重に検討すべきでしょう。

以下の記事では、ダブルライセンスの詳細や具体的なメリットなどについて説明していますので、興味のある方はチェックしてみてください。

行政書士と司法書士の業務内容の違い

数多くの士業の中でも、行政書士と司法書士は人気の資格です。

2つの資格には、どちらも「書士」という言葉が付いていますが、これは即ち「法律に基づく書類作成および代行の専門家」という意味です。

同じような資格なのではとイメージしている方はいますが、行政書士と司法書士は業務内容や業務範囲で大きな違いがあるのが特徴です。

そこでまずは、行政書士と司法書士の業務内容の違いを大まかに見ていきましょう。

  • 行政書士が取り扱う業務は、官公署に提出する許認可等の書類作成や申請手続きの代理、権利義務に関する書類の作成など
  • 司法書士が取り扱う業務は、登記や供託に関連する申請の代行、簡易裁判所における代理人業務など

行政書士は、主に都道府県や市町村に提出する書類の作成や手続きの代理といった業務を顧客に提供します。

一方で司法書士は、法務局や裁判所への提出書類の作成や簡易裁判所での代理人がメインの業務です。

行政書士も司法書士も書類の作成だけではなく、コンサルティング業務で稼ぐ方も現在では増えました。

行政書士と司法書士の試験内容の違い

行政書士と司法書士とでは、下記のように試験内容にも違いがあります。

国家資格 行政書士 司法書士
試験科目 「基礎法学」「憲法」「民法」「行政法」「一般知識」 「憲法」「民法」「刑法」「商法」「不動産登記法」「民事訴訟法」「商業登記法」「供託法」
試験形式 多肢択一式または記述式 多肢択一式または記述式(書式)
試験日程 11月の筆記試験1日で全て実施 7月の筆記試験の合格者は10月の口述試験を受験可
合格に必要な得点 全体の6割程度 全体の7~8割程度

どちらの資格も、試験で基準点をクリアすると合格できる仕組みです。

また、行政書士は国家公務員や地方公務員として17年~20年以上事務を手がける、司法書士は裁判所や検察庁で事務官を10年以上勤めると資格を取得できます。

行政書士と司法書士のダブルライセンスをおすすめする理由はこれだ!

現在では顧客やクライアントからの依頼にワンストップで対応するために、行政書士と司法書士のダブルライセンスを目指す方が増えました。

関連する2種類以上の資格を保有している方をダブルライセンスと呼びます。

2つの資格試験に合格しないといけませんので大変ですが、行政書士と司法書士のダブルライセンスはメリットが大きいですよ。

このページでは、行政書士と司法書士のダブルライセンスをおすすめする理由をいくつか挙げてみました。

試験範囲が被っている

行政書士と司法書士のダブルライセンスが向いているのは、試験範囲が被っているからです。

行政書士試験の科目の中でも、「憲法」「民法」「会社法(商法)」は、司法書士の試験範囲になっています。

行政書士に合格した人はこれらの法律の知識が頭に入っていますので、初学者と比べてみると遥かに司法書士試験に合格しやすいわけです。

もちろん、試験の日程が空く場合は、被っている試験範囲も必ず復習しないといけません。

しかし、少しでも内容が頭に入っていれば復習の時間が短くても思い出すことができますので、他の試験科目の学習に時間を費やすことができます。

両方のテリトリーに跨って仕事ができる

行政書士と司法書士のダブルライセンスを目指すに当たり、一番のメリットは業務の幅が広がることです。

両方のテリトリーに跨って仕事ができますので、「行政書士単体」「司法書士単体」よりも顧客の満足度は高まります。

具体的に行政書士と司法書士のダブルライセンスで、業務がどう変わるのか見ていきましょう。

  • 相続であれば相続登記の手続きや遺言書が可能
  • 会社設立であれば定款の作成や登記申請の各種営業許可ができる

顧客の視点に立ってみると、「○○○の書類の作成は行政書士事務所に」「○○○の書類の作成は司法書士事務所に」と渡り歩かなくて済みます。

ワンストップで手厚いサービスやサポートを顧客に提供できますので、ダブルライセンス者は強いわけですね。

独立開業での成功率がアップする

行政書士や司法書士の資格は、独立開業を視野に入れて取得します。

就職や転職でも役立ちますが、どちらかと言うと独立に向けた国家資格です。

もし行政書士と司法書士のダブルライセンスになれば、独立開業の成功率は大きくアップします。

難しい資格を2つも取得している事実や業務範囲の拡大で、顧客やクライアントをしっかりと確保できるようになるわけです。

もちろん、国家資格を持っているだけで全ての問題が解決するわけではありません。

行政書士と司法書士のダブルライセンスで満足するのではなく、「得意分野の業務を見つける」「士業間の人脈を広げる」「営業力&集客力を身につける」といった努力を積み重ねてください。

行政書士と司法書士の試験の難易度を合格率で比較

結論から言うと、試験の難易度で比較してみると行政書士よりも司法書士の方が圧倒的に高くなっています。

「行政書士には合格できたけど、司法書士は不合格が続いているからダブルライセンスになれない…」という方は少なくありません。

なぜ行政書士試験よりも司法書士試験の方が難しいのか、今までの合格率で比較してみました。

試験年度 行政書士の合格率 司法書士の合格率
平成22年度 6.6% 2.86%
平成23年度 8.05% 2.81%
平成24年度 9.19% 2.85%
平成25年度 10.1% 2.91%
平成26年度 8.27% 3.09%
平成27年度 13.1% 3.25%
平成28年度 9.95% 3.24%
平成29年度 15.7% 4.07%
平成30年度 12.7% 4.32%

近年では行政書士試験の合格率は12%~15%と上がっているのに対して、司法書士試験は今も昔も3%前後!

30人の受験者に対して1人くらいしか合格できないと考えると、司法書士の難易度が物凄く高いことがおわかり頂けるのではないでしょうか。

なぜ司法書士試験の難易度が高いのか、いくつかの理由を挙げていきます。

  • 試験範囲が幅広くて覚える内容が多い
  • 多肢択一式と記述式の試験で足切りがある
  • 「とりあえず受けてみたい」という記念受験層も多い

真面目に勉強して試験を受験している方だけで見てみると、司法書士試験でもここまで合格率は低くなりません。

つまり、「3%を突破するなんて無理だ…」とあまり悲観しなくても大丈夫です。

行政書士に関しても記念受験層もいますので、試験に合格できるようにしっかりと勉強を積み重ねてください。

行政書士の難易度については、下記の記事も参考にしてください。

行政書士の難易度
行政書士の偏差値は?難易度ランキングを徹底分析!これから行政書士の資格取得を目指す方は、難易度が高いのか低いのか気になりますよね。 行政書士は法律系の資格(士業)の一つで、弁護士...

 

行政書士と司法書士に合格するまでの勉強時間で比較

行政書士と司法書士は、試験に合格するまでの勉強時間にも違いがあります。

個人差がありますので一概には説明できませんが、2つの資格にどのくらいの差があるのか比較してみました。

  • 行政書士試験に合格するまでの勉強時間は、500時間~800時間が目安
  • 司法書士試験に合格するまでの勉強時間は、2,000時間~3,000時間が目安

司法書士は、士業の中でも有数の難関資格のため、複数年という長い勉強時間が必要になります。

毎日3時間ほど勉強を続けても、合格までに2年~3年は必要な計算ですね。

行政書士の試験の場合は、ある程度の法律の知識があれば半年間で合格するのも不可能ではありません。

しかし、司法書士は行政書士よりも難易度が明らかに上ですので、数倍以上もの勉強が必要なことを覚悟すべきでしょう。

少しでも効率良く学習して勉強時間を短くしたいのであれば、独学ではなく予備校への通学や通信講座の利用をおすすめします。

予備校やスクールのカリキュラムは今までに多くの方を合格に導いた実績がありますので、行政書士と司法書士のダブルライセンスを目指す方は積極的に利用しましょう。

行政書士の勉強時間については、下記の記事も参考にしてください。

行政書士試験の勉強時間
行政書士の勉強時間の目安は500~800時間!科目別の配分は?【2023年向け最新版】行政書士の勉強時間は独学では600時間~800時間、予備校や通信講座の利用で試験に合格するには500時間程度と言われています。さらに、この記事では行政書士の試験科目の勉強する順番、勉強を始めるおすすめの時期についてもお伝えします。...

 

行政書士と司法書士の資格を同時受験して取得できる?

早くダブルライセンスになって仕事で活かすために、「行政書士と司法書士の資格を同時受験して取得できるの?」と疑問を抱えている方は少なくありません。

1年間で2つの試験に合格できれば、早く独立開業して経験を積み重ねることができます。

「司法書士・行政書士W受験コース」など、両方の試験の同時受験を目指すカリキュラムを採用する予備校やスクールは増えました。

しかし、どちらもそれなりに難しくて合格率が低い国家資格ですので、同時受験で合格を目指すのは効率が良い方法とは言えません。

皆さんが想像している以上に長い勉強時間が必要ですので、2つとも中途半端に終わって行政書士も司法書士も落ちるリスクが高くなります。

そのため、行政書士と司法書士のダブルライセンスを目指す方は、どちらかの資格に合格してからもう一方の試験の勉強を始めましょう。

焦って勉強しても何一つとして良いことはありませんので、一歩ずつステップアップするのが大事です。

行政書士と司法書士の兼業事務所に多い傾向

司法書士は職業上の兼業禁止の規制がないため、行政書士とのダブルライセンスで働くことができます。

そこで、行政書士と司法書士の兼業事務所に多い傾向をいくつか挙げてみました。

  • 法務局の職員のOBが10年以上の経験で司法書士の資格を取得し、事務所を開業するケースが多い
  • あくまでも本業は司法書士で、副業として行政書士の仕事を行う事務所が多い
  • 登記には関係ない建設業許可や風俗営業許可の業務に力を入れている事務所は少ない

2つの資格を活かして兼業事務所を開設するには、何の業務をメインで取り扱うのか明確にしないといけません。

また、日本司法書士会連合会では、司法書士会会則基準で事務所の名称に関する制約を設けています。

参考:東京司法書士会会則 https://www.tokyokai.jp/about/data_pdf/data0101_1.pdf

兼業事務所は禁止されていませんが、「司法書士以外の資格の名称が含まれるのはNG」「他業種と誤認されるような事務所の名称をつけるのはNG」と2つの制約がありますので注意してください。

行政書士と司法書士の資格に関するよくあるQ&A

このページでは、行政書士と司法書士の資格に関するよくある質問をQ&A形式で解説していきます。

Q:行政書士と司法書士の登録費用はどのくらいですか?
A:行政書士会への登録費用は入会金が20万円、日本司法書士連合会への登録費用は入会金が35,000円~50,000円程度かかります。入会金以外の費用も発生しますので、事前に確認しておきましょう。

Q:行政書士と司法書士に独占業務はありますか?
A:両方の資格に独占業務が設定されています。ダブルライセンスになれば、行政書士と司法書士の両方の独占業務で顧客へのサポートが可能です。

Q:行政書士と司法書士に受験資格はありますか?
A:行政書士も司法書士も、年齢や学歴などの受験資格はありません。受験料さえ支払えば誰でも受験可能です。

Q:行政書士と司法書士の試験に免除制度はありますか?
A:この2つの資格試験に免除制度はありません。

まとめ

以上のように、行政書士と司法書士のダブルライセンスがおすすめの理由についておわかり頂けましたか?

2つの資格は試験範囲が被っていますので、関連のない2つの資格を取得するのに比べ、効率的にダブルライセンスを目指せます。

今までよりも業務の幅を広げることができますので、行政書士の資格だけで不安を抱えている方は司法書士にもチャレンジしてみてください。

ここまで、行政書士と司法書士のダブルライセンスについてお伝えしました。

行政書士のダブルライセンス全般については、下記記事を参考にしてください。

行政書士のダブルライセンスについて
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この記事の監修者
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション