行政書士について

行政書士にしかできない独占業務に違反するとどうなる?!

行政書士の独占業務

今回は、「行政書士の独占業務」に関する記事です。

一説には、行政書士が取り扱うことができる書類は1万種類を超えるとも言われており、業務範囲が広いのが行政書士の魅力の一つです。

一方で、弁護士を始めとする他士業の独占業務は行えないなど、注意すべき点もあります。

この記事では、行政書士の独占業務や業務範囲、できることとできないことについてまとめてあります。

気になる方は、ぜひチェックしてくださいね。

行政書士だけの独占業務とは?まとめてみた

多くの士業は、その資格ホルダー以外行うことを禁止されている独占業務があります。

そのような独占業務は行政書士にも存在するため、行政書士が人気の要因の一つといえるでしょう。

行政書士の独占業務の法的根拠は、下記のように行政書士法で触れられています。

第一条の二:行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

第十九条行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。 ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

引用:行政書士法(e-Gov法令検索)

他の士業と比べると行政書士は取り扱える業務範囲が広いのが特徴ですが、法に定められた行政書士にしかできない独占業務は、

  • 「許認可申請の作成や手続きの代理」
  • 「事実証明の契約書の作成や手続きの代理」
  • 「権利義務の書類の作成や手続きの代理」

に大きくわけられます。

街の法律の専門家として、行政書士は国民と行政機関の間に入るパイプ役になってくれるわけです。

行政機関への書類は複雑なものが多く、「手続きをスムーズに進めることができない」と悩んでいる方は少なくありません。

そのような方をサポートする独占業務を持つ資格が行政書士で、書類の作成や手続きの代理に加えて顧客やクライアントにアドバイスも行います。

この項では、「許認可申請の作成や手続きの代理」「事実証明や権利義務の契約書の作成や手続きの代理」の2つにわけて具体的な行政書士の業務内容をまとめてみました。

許認可申請の作成や手続きの代理

行政書士の独占業務の中でも、許認可申請の作成や手続きの代理は代表的です。

許認可申請書とは官公署へ提出する書類で、その種類は日本行政書士会連合会のサイトによると1万を超えると言われています。

行政書士ができる許認可申請でどのような書類があるのか見ていきましょう。

  • 飲食店営業許可申請書
  • 風俗営業許可申請書
  • 建設業許可申請書
  • NPO法人許可申請書
  • 旅館営業許可申請書
  • 個人タクシー免許申請書
  • 農地転用許可申請書
  • 建築確認申請書
  • 宅地建物取引業免許許可申請書
  • 旅行業登録申請書
  • 道路使用許可申請書
  • 医療法人設立許可申請書
  • 産業廃棄物収集運搬業許可
  • 医薬品販売業許可
  • 一般貨物自動車運送事業許可

全てを記載するとキリがないので、代表的な書類だけ挙げてみました。

簡易な書類を提出すれば終わるものから多くの書類の添付が必要なものまで幅広く、「行政書士は書類作成のプロ」と言っても過言ではありません。

個人や企業を問わず、様々な顧客やクライアントと関わっていくことができるのは行政書士の資格の魅力ですよ。

事実証明や権利義務の契約書の作成や手続きの代理

行政書士は許認可申請に加えて、事実証明や権利義務の契約書の作成や手続きの代理の独占業務をこなすことができます。

事実証明とは会議の内容などの事実を証明する文書、権利義務とは権利の発生や存続の効果を生じさせる目的の意思表示を行う書類です。

以下では、行政書士の独占業務の権利義務または事実証明に関する書類の例を挙げていきます。

  • 遺産分割協議書
  • 帰化申請書
  • 遺言書
  • 永住許可申請書
  • 各種契約書
  • 告発状
  • 上申書
  • 始末書
  • 会計帳簿
  • 在留期間更新許可申請書
  • 念書
  • 車庫証明
  • 示談書
  • 国籍取得届
  • 議事録
  • 内容証明
  • 嘆願書
  • 実地調査にもとづく各種図面書類

新たな法律や条例の制定で行政書士が取り扱える書類は増えることもありますので、活躍のフィールドは今後も広がっていくでしょう。

しかし、これらの書類の中には完全な行政書士の独占業務ではなく、他の士業の業務範囲にも含まれているケースがあります。

例えば、非紛争的契約書や協議書類は弁護士、外国人の帰化許可申請書は司法書士でも作成のサポートが可能です。

自分が活躍できる範囲を広げたい方は、行政書士と他の士業のダブルライセンスを目指してみてください。

※行政書士と司法書士のダブルライセンスをおすすめする理由は、下記のページで解説しています。

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行政書士の独占業務は今後増える可能性もある

新たな法律や条令が制定されることにより、役所に提出する書類が増えることは多々あります。その場合、行政書士の独占業務となる可能性があり、ますます行政書士が活躍できるフィールド広がります。

行政書士の業務は様々な業界・様々な分野に広がっており、現実に、これまでも独占業務は増えてきた、という経緯があります。

ただし、独占業務だけでは行政書士として差別化しづらく、特に新たに行政書士として仕事を始める方は、自分を特徴づける強みが必要です。

近年では、独占業務以外に顧客に付加価値を提供するために、コンサルティングに進出する行政書士も多くなりました。

行政書士の独占業務以外には、コンサルティングが有望

行政書士にできることは、何も書類の作成や手続きの代理だけではありません。

官公署に提出する書類の作成や権利義務または事実証明に関する契約書の作成は行政書士の独占業務ですが、専門的な法律の知識を活かしてアドバイスやコンサルティングの仕事を請け負うこともできます。

本業の書類作成のサポートを行いながらも、コンサルティング業務に力を入れる行政書士の数は以前よりも増えました。

具体的な例を挙げてみると、行政書士のコンサルティング業務は法改正後のアドバイスが代表的です。

法改正が行われると、「今まで必要だったものが不要になる」「今までは不要だったものが必要になる」など大きな変化があります。

法令の変更点が書類なのかインフラの整備なのか、企業に対してアドバイスするのが行政書士の役割です。

自分の法律知識を活かした仕事をしてアピールすれば、より一層顧客やクライアントの確保に繋がるのではないでしょうか。

行政書士がやってはいけない業務とは?

ここまでの説明を受けていると、「行政書士は何でもできる法律のプロだね」とイメージする方は少なくありません。

確かに、士業の中でもできることの多い資格ですが、行政書士には次のようにできないこともありますよ。

  • 裁判に関すること:代理人や裁判所への書類の提出など
  • 相手と交渉すること:示談の交渉や説得など
  • 会社や土地の登記:法人登記や土地の登記など
  • 税金に関すること:相続税対策や節税など

 

もっとも混乱しやすいのは司法書士の独占業務

上記の行政書士にはできない業務のうち、裁判・交渉は弁護士の独占業務、登記は司法書士の独占業務、税務は税理士の独占業務です。

このうち、もっとも行政書士の業務と混乱しやすいのは、司法書士の登記業務です。どちらも書類作成が主であり、役所に書類の提出するなど類似点が多いため、「行政書士の独占業務」と誤って認識している方が一定数います。

しかし、登記に関わる業務は司法書士の独占業務ですから、行政書士が行うことはできません(違法行為)。

各士業団体がロビー活動を拡げているのが現状

ただ、行政書士が関わることのできる範囲は、法律の解釈で様々な論争が行われているのが現状です。

行政書士会にとって、行政書士の利益のため、行政書士の独占業務を増やすべくロビー活動を行うことも組織としての目的の1つであり、実際に活動が行われています。

また前述のとおり、法改正等で行政書士の業務範囲は少しずつ拡大していますので、今後も将来性が期待できる資格だと言えます。

行政書士の将来性や需要についてはこちらのページでまとめました。

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行政書士と弁護士を業務内容で比較!

行政書士の業務のフローは、「○○○までできる」「○○○のみできる」といった特徴があります。

「行政書士は○○○までしかできないけど、他の士業なら全部できる」というケースは少なくありません。

そこで、ここでは行政書士と弁護士を業務内容で徹底比較してみました。

業務内容 行政書士 弁護士
示談交渉 和解書や合意書の作成のみ 裁判手続きの検討
契約書 契約書の作成のみ 契約書の内容の交渉までOK
民事・家事裁判 代理人にはなれない 代理人になれる
借金問題 示談交渉はできない 示談交渉ができる
離婚事件 離婚協議書を作成できる 調停などの裁判手続きもできる
相続問題 遺言書や遺産分割協議書の作成のみ 遺産分割調停の裁判手続き

行政書士はオールマイティな法律系の資格とイメージしている方は多いものの、弁護士のように裁判の手続きをしたり代理人になったりすることはできません。

もちろん、行政書士の資格だけでは他の士業の根拠法などで制限されている業務に手が出せないので注意してください。

独占業務で行政書士法に違反するとどうなる?

もし行政書士の資格を持たない方が独占業務を行うと、行政書士法違反になります。

この点に関しては、行政書士だけではなく他の士業の資格でも一緒です。

例えば、行政書士ではない人が依頼人から一定額の報酬をもらい、官公署への申請書を代わりに作成したとします。

これは行政書士法19条1項違反になり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるのです。

法律の規定は少々ややこしい部分がありますので、これから行政書士を目指す方は何ができて何ができないのかしっかりと確認しておきましょう。

まとめ

以上のように、行政書士の独占業務や業務範囲、できることとできないことについてまとめました。

行政書士の資格保有者しかできない独占業務は、「許認可申請の作成や手続きの代理」「事実証明の契約書の作成や手続きの代理」「権利義務の書類の作成や手続きの代理」の3つです。

書類作成のプロとして、顧客やクライアントを徹底的にサポートできますよ。

士業事務所への転職だけではなく独立開業でも役立つ資格ですので、行政書士の取得を目指してみてください。

この記事の監修者
氏名 西俊明
保有資格 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士
所属 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション