行政書士を独学で目指すメリットについてまとめてみた
行政書士とは行政手続きを専門とする法律家で、1951年(昭和26年)に成立した行政書士法で誕生しました。
試験に合格して行政書士になると、「書類作成業務」「許認可申請の代理」「相談業務」の3つの仕事内容ができます。
この行政書士を目指すに当たり、独学で勉強しようか専門スクールを利用しようか迷っている方はいませんか?
難易度の高い国家資格ですが、独学で勉強して試験に合格することは十分にできますよ。
以下では、行政書士を独学で目指すメリットについて詳しくまとめてみました。
費用を安く抑えられる
資格試験の勉強の出費を少しでも抑えたい方には、独学がおすすめです。
行政書士を独学で目指す場合、テキストや参考書があれば試験勉強に取り組むことができます。
行政書士のテキストは3,000円~4,500円、問題集は2,500円~4,000円、過去問や予想問題集は2,500円前後とそこまで高くありません。
一方で、一般的には行政書士のスクール通学では10万円以上、通信講座では5~10万円程度の費用がかかります。
選択するコースやカリキュラムによって違いはありますが、独学で勉強した方が遥かに安いですよね。
経済的な事情でスクールへの通学や通信講座が利用できない方は、テキストや問題集を購入して独学で行政書士合格を目指してみてください。
自分のペースで勉強できる
自分のペースで無理なく勉強できるのは、行政書士を独学で目指す大きなメリットです。
スクールに通学して行政書士に合格する勉強を始めると、次のように手間と時間がかかります。
- 講義の時間やスケジュールが決まっている
- 時間通りに現地に足を運ぶ必要がある
一方で独学の場合は、わざわざ通学する必要はありません。
「残業が多くて疲れている日は30分だけ」「定時に帰宅できた日は3時間頑張る」と、自分の好きな場所と時間に行政書士の勉強ができます。
社会人やサラリーマンが時間を見つけて、スクールに通学するのは現実的ではありません。
仕事と資格取得の両立が難しい点では一緒ですが、自分のペースでしっかりと勉強できる人にとっては独学の方が向いています。
戦略やスケジュールを立てる力を身につけられる
独学で行政書士合格を目指すに当たり、試験勉強から対策の方法まで全て自分でこなさないといけません。
誰にも頼らずに自分の力で取り組む形になりますので、目標達成のための戦略やスケジュールを立てる力を身につけることができます。
このスキルは行政書士の試験合格だけではなく、今後の生活に大きく役立つと言っても良いでしょう。
ただし、仕事と行政書士の勉強を両立する中でスケジュール通りに事が運ばないケースもありますので、その都度調整しながら取り組むのがポイントです。
行政書士を独学で目指すデメリットはあるの?
金銭的な負担を少しでも抑えるために、独学で行政書士試験を目指す方は増えています。
最低限の参考書やテキストがあれば行政書士の勉強ができますので、2万円以下の費用で抑えることも十分に可能ですね。
しかし、行政書士を独学で目指すに当たり、次のデメリットがありますので気を付けましょう。
モチベーションの維持が難しい
独学で行政書士合格を目指す場合は、自由度ゆえにモチベーションの維持が難しいのがデメリットです。
「絶対に合格して転職に役立てる!」「合格して起業したい!」と確固たる意志がないと、「自分には無理だ…」と諦めてしまいます。
独学と比べるとスクールへの通学や通信講座は、次の理由で試験勉強のモチベーションを維持しやすいのです。
- 講座や講義の受講で高額な費用を支払っているので、「やらなければお金が勿体ない」という気持ちが芽生える
- スクールに通学して勉強する場合はカリキュラムや時間があらかじめ決まっている
- 担当の講師によるサポートやアドバイスを受けながら学習を進められる
独学は行政書士を目指す理由が曖昧だったり一人での学習が苦手だったりすると、挫折して諦めやすいと心得ておいてください。
間違った勉強法で学習を続ける恐れがある
独学は一人で行政書士の試験合格に取り組む形になりますので、間違った勉強法で学習を続ける恐れがあります。
「間違っていても自分で気付けない」「誤った知識を覚えてしまう」といった状態では、難関資格の行政書士に合格することはできません。
独りよがりな勉強を知らず知らずの間にやり続けてしまうのは、独学の大きなデメリットです。
それに最初に予定を立てたとしても試験日までに消化しきれないケースもありますので、法律の知識のない初学者が独学で行政書士の試験勉強に取り組むのは予備校や通信講座と比べてハードルが高くなりますよ。
わからない時に質問ができない
行政書士の試験勉強をしている中で、下記のような疑問点が出てくることがあります。
- 債権者代位権で直接自分に引き渡し出来ないのは不動産登記の移転登記だけ?
- 行政手続法第24条2項で審理が行われなかった場合の聴聞は存在する?
- 「株式の引受人が出資の履行をすることにより株主になる権利の譲渡は株式会社に対抗することはできない」の意味は?
独学だとわからない時に誰かに質問できないため、自分で基本書や参考書を読んで調べないといけません。
それでも理解できない時は非常に厄介で、そのまま放置していると試験の合否に影響を及ぼします。
一方でスクールへの通学や通信講座を利用していれば、行政書士について正しい知識や経験を持つ講師にサっと質問できるのです。
「整ったカリキュラムで行政書士を目指したい」「質問に応じてもらいたい」と考えている方は、独学よりもスクールへの通学や通信講座が向いています。
試験の合格率が低くなる
行政書士は難関の国家資格で、試験の合格率のデータを見ていきましょう。
<試験年度 受験者数 合格者数 合格率>
2010年 70,586名 4,662名 6.60%
2011年 66,297名 5,337名 8.05%
2012年 59,948名 5,508名 9.19%
2013年 55,436名 5,597名 10.10%
2014年 48,869名 4,043名 8.27%
2015年 44,366名 5,820名 13.1%
2016年 41,053名 4,084名 9.95%
2017年 40,449名 6,360名 15.7%
2018年 39,105名 4,968名 12.7%
合格率は大よそ6%~10%前後の数値ですので、行政書士が難しい試験だとわかります。
「独学で行政書士試験を受けた人の合格率は○○%」とのデータは出ていません。
しかし、多くのスクールや通信講座が「平均合格率の××倍の実績!」とアピールしているということは、反対に独学の場合は合格率が低い、という計算になります。
これは戦略やスケジューリングを誤りやすく、十分な対策ができないまま行政書士の試験本番を迎えやすいからですね。
少しでも合格率を上げたいのであれば、独学ではなくスクールへの通学や通信講座で行政書士の勉強に取り組んでみましょう。
行政書士を独学で合格するために押さえておきたいポイント
行政書士を独学で合格するには、いくつかの押さえておきたいポイントがあります。
「行政書士の試験に合格するために何をすれば良いの?」「どうやって行政書士の勉強をすれば良いの?」と疑問を抱えている方は参考にしてみてください。
しっかりと勉強時間を確保する
個人のブログを見ていると、「3ヵ月の勉強で行政書士の試験に合格できた」という人はいます。
1日の勉強時間でも変わりますが、初学者が独学で行政書士の勉強をスタートするのであれば、それなりに長い時間がかかると心得ておくべきです。
とある有名な通信講座では、行政書士の標準学習時間として500時間を目安にしています。
しかし、独学では専門の講師による講義やサポートを受けられないため、もっと長い時間の勉強が必要です。
行政書士の合格までに800時間を費やすと仮定すると、1日に3時間の勉強で1ヵ月に90時間、トータルで9ヵ月はかかります。
平日に仕事をしながら1日3時間の勉強時間を確保するのは意外と大変ですので、もっと長い期間を見積もっておいた方が良いでしょう。
つまり、独学で行政書士の資格を取得したいのであれば、しっかりと勉強時間と期間を確保するのが大事ですよ。
テキストや参考書の選び方に気を配る
独学で行政書士の合格を目指すに当たり、自分でテキストや参考書を選ばないといけません。
テキストや参考書の選び方が間違っていると効率良く勉強できないため、独学で合格を目指す方が絶対に押さえておきたいポイントです。
どのテキストも行政書士の資格取得で最低限覚えておくべき知識は網羅されていますが、次の基準に従って選んでみましょう。
- パラパラとめくってみて見やすいと感じるのかどうか
- 自分のレベルに合っているかどうか(初学者は取っつきやすいフルカラー版など)
- 一問一答式の確認問題がついていて理解度を確認しながら学習できるかどうか
- 「法の意義」「法律の要件」「事例」が整理されているかどうか
行政書士のテキストは様々なものが出版されていますので、自分に合う1冊を選んで独学による勉強をスタートすべきです。
独学用のテキストについて詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
行政法と民法の勉強を中心に行う
行政書士の試験科目は、次のように「法令等」と「一般知識等」の2つに大きくわけられます。
- 政治・経済・社会(28点)
- 情報通信・個人情報保護(16点)
- 文章理解(12点)
これらの科目の中でも、独学で行政書士の合格を目指すなら行政法と民法の勉強を中心に行いましょう。
行政法に至っては、「基礎法学」「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法・損失補償」「地方自治法」と更に細かく科目がわかれています。
行政法と民法の2科目の得点を合計すると300満点中188点で、全体の60%近くを占めているのです。
出題数が多くて比較的難易度の低い科目で得点できるのかどうかで、行政書士試験の合格不合格が決まると言っても過言ではありません。
他の試験科目は流して良いわけではないものの、行政法と民法は特に力を入れて学習してください。
※行政法や民法の勉強法について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
過去問を繰り返し解く
他の資格試験にも該当しますが、独学で行政書士の合格を目指すに当たって過去問は必須アイテムです。
ここでは参考書やテキストに加えて、過去問を使って行政書士試験の対策を行うべき理由をいくつか挙げていきます。
- 新しい試験問題は過去問を参考にして作られる傾向がある
- 試験で頻出する問題や論点を把握できるようになる
- 一問一答式の過去問はスキマ時間を有効活用して学習できる
過去問で問われた趣旨や論点を理解していれば、角度を変えて出題されたとしてもしっかりと対応できます。
インプットで基本的知識を固めた後は、問題をどんどん解くアウトプットに切り替えて行政書士の試験対策を行いましょう。
もちろん、過去問を解いて理解できなかった部分は、参考書やテキストに戻って復習すべきですね。
過去問の使い方について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
記述式の試験の対策をしよう
法令等の試験科目からは、選択式の問題だけではなく記述式の問題も出題されます。
複数の選択肢から当てはまる項目を選ぶ問題とは違い、行政書士の記述式の問題は40文字程度の文章を作成しないといけません。
そこで、記述式の問題の対策として、「問題文を読解するスキルを身につける」「法律に触れて正しく内容を理解する」「完璧になるまで何度も解く」という3つを押さえておきましょう。
苦手分野やわからない部分を一つでも減らすことができれば、行政書士の試験の合格に一歩近付きます。
記述式の問題の対策や勉強法については、下記記事も参考にしてください。
行政書士の模試を一度受けよう
独学で行政書士の合格を目指している人は、模試を一度受けてみましょう。
模試(模擬試験)や答練(答案練習会)を受験すれば、今の実力を把握したり苦手分野を克服したりできます。
行政書士の試験では毎年違った問題が出題される傾向がありますので、過去問を解いているだけでは不十分です。
模試はその年の本番に出題される可能性が高い問題を押さえることができるため、受けておいて損はありません。
模試の効果的な活用方法については、下記の記事も参考にしてみてください。
まとめ
「行政書士を独学で目指したい!」と考える方のために、メリットとデメリットを詳しくまとめました。
スクールへの通学や通信講座とは違い、独学は費用を抑えられたり自分のペースで学習できたりするのがメリットです。
その代わりに、モチベーションの低下や試験の合格率が下がる傾向にある、といったデメリットがあります。
個人によって向き不向きはありますが、独学で行政書士を目指したい方は、「勉強時間を確保する」「テキスト選びに気を配る」「行政法と民法の勉強を徹底する」「過去問を有効活用する」といった点を押さえて取り組んでみてください。
行政書士の独学勉強法について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
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行政書士試験の対策については、以下の記事を参考にしてください。
<行政書士試験 総合>
<勉強法(総合)>
- 独学勉強法【おすすめ】
- 独学のメリットとデメリット
- 過去問の使い方
- 記述式の対策法
- 模試の活用方法
- 行政書士の勉強時間の目安・勉強の順番 【人気!】
<勉強法(科目別)>
<教材・テキスト>
- おすすめテキスト・参考書【人気!】
- おすすめ六法
- おすすめ判例集
- おすすめアプリ
- おすすめ漫画テキスト(初学者向け)【おすすめ】
<合格体験記>
この記事の監修者 | |
氏名 | 西俊明 |
保有資格 | 中小企業診断士 , 宅地建物取引士 , 2級FP技能士 |
所属 | 合同会社ライトサポートアンドコミュニケーション |