今回は、行政書士の独立開業について、説明していきます。
「行政書士」という、難易度の高い士業の資格を取った以上、
「最終的に、自分は独立したい!」
と思っている方も多いと思います。
そうした考えのとおり、行政書士は充分に独立して稼げる可能性の広がっている資格です。
とは言え、独立した人がすべて、成功するわけではありません。
厳しい現実に直面し、後悔される方も少なくないのです。
成功する確率を高めるためには、副業や雇われ(本業・転職)で行政書士の仕事を覚え、さらに独立のための緻密な戦略を練り上げる必要があります。
今回の記事では、以上のような「独立のための方法論や戦略」について、分かりやすく説明していきます。
「いつかは行政書士で独立して成功したい!」
という方には、ぜひ読んで頂きたいと思います。
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独立した行政書士の仕事
まず、行政書士として独立した場合の仕事の内容から見ていきましょう。
「街の身近な法律家」とも言われる行政書士ですが、取り扱うことができる書類は1万種類以上と、業務の幅が非常に広いのが特徴です。
あまりにも多くの業務が可能なため、独立・開業で成功している行政書士の多くは、自らの専門分野を定め、そのなかで差別化を進めて仕事を獲得していっています。
そうした行政書士の仕事を法律で担保しているのが「独占業務」です。
行政書士の独占業務
行政書士の独占業務について、以下の内容が行政書士法の第一条2項で定められています。
- 「許認可申請の作成や手続きの代理」
- 「事実証明の契約書の作成や手続きの代理」
- 「権利義務の書類の作成や手続きの代理」
以下、「許認可申請の作成や手続きの代理」と「事実証明や権利義務の契約書の作成や手続きの代理」の2つにわけて具体的な行政書士の独占業務の内容を見てみます。
許認可申請の作成や手続きの代理
行政書士の独占業務の中でも、許認可申請の作成や手続きの代理は代表的です。
許認可申請書は官公署へ提出する書類であり、行政書士ができる許認可申請には次のような書類があります。
- 飲食店営業許可申請書
- 風俗営業許可申請書
- 建設業許可申請書
- NPO法人許可申請書
- 旅館営業許可申請書
上記はごく一部の例であり、簡易な書類を提出すれば終わるものから多くの書類の添付が必要なものまで幅広く存在します。
事実証明や権利義務の契約書の作成や手続きの代理
事実証明とは会議の内容などの事実を証明する文書、権利義務とは権利の発生や存続の効果を生じさせる目的の意思表示を行う書類のことであり、こちらも行政書士の独占業務となります。
以下、行政書士の独占業務の権利義務または事実証明に関する書類の例を挙げていきます。
- 遺産分割協議書
- 帰化申請書
- 遺言書
- 各種契約書
- 告発状
- 上申書
- 会計帳簿
- 車庫証明
- 示談書
- 内容証明
- 嘆願書
- 実地調査にもとづく各種図面書類
こちらもごく一部の例です。なお、事実証明や権利義務の書類に関する業務の中には完全な行政書士の独占業務ではなく、他の士業の業務範囲にも含まれているケースがあります。
例えば、非紛争的契約書や協議書類は弁護士、外国人の帰化許可申請書は司法書士でも作成のサポートが可能です。
独立系行政書士には、独占業務以外にコンサルティングが有望
独占業務だけでは行政書士として差別化しづらく、特に新たに行政書士として仕事を始める方は、自分を特徴づける強みが必要です。
近年では、独占業務以外に顧客に付加価値を提供するために、コンサルティング業務に進出する行政書士も多くなりました。
その専門的な法律の知識を活かして、顧客のお困りごとを解決するためにアドバイスやコンサルティングの仕事を請け負うのです。
具体的な例をとしては、行政書士のコンサルティング業務には「法改正後のアドバイス」「起業や新規事業開発に関する手続きへのアドバイス」などが代表的。
自分の法律知識を活かした仕事をしてアピールすれば、より一層顧客やクライアントの確保に繋がります。
行政書士がやってはいけない業務とは?
行政書士には次のようにできないこともありますよ。
- 裁判に関すること:代理人や裁判所への書類の提出など
- 相手と交渉すること:示談の交渉や説得など
- 会社や土地の登記:法人登記や土地の登記など
- 税金に関すること:相続税対策や節税など
上記の行政書士にはできない業務のうち、裁判・交渉は弁護士の独占業務、登記は司法書士の独占業務、税務は税理士の独占業務です。
独占業務で行政書士法に違反するとどうなる?
もし行政書士の資格を持たない方が独占業務を行うと、行政書士法違反になります。
この点に関しては、行政書士だけではなく他の士業の資格でも一緒です。
例えば、行政書士ではない人が依頼人から一定額の報酬をもらい、官公署への申請書を代わりに作成したとします。
これは行政書士法19条1項違反になり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるのです。
法律の規定は少々ややこしい部分がありますので、これから行政書士を目指す方は何ができて何ができないのかしっかりと確認しておきましょう。
※ここまで行政書士の仕事について、独占業務を中心に見てきました。行政書士の独占業務について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
行政書士の独立は難しい? 食べていける?
「行政書士は食えない」「行政書士は儲からない」
などのネットの書き込みを見ることがあります。また、
「弁護士や税理士などの難関資格でも食べていけない人が多くいる」
などの記事が出ていることもあります。
現実問題として、士業で独立開業した方のうち、6割以上が3年以内に廃業すると言われています。
特に行政書士として開業した人のうち、8割以上が3年以内に廃業するという状況もあります。
このような状況から、
「本当に行政書士として生活していけるのか?」
と不安を持つ方も多いと思います。
しかし、その答えは「その人次第である」としか、言いようがありません。
1つ言えるのは、毎月一定の給料がもらえる会社員と比べれば、相当な覚悟が必要ということです。
それでも、成功している行政書士・安定して経営している行政書士は一定数います。
- 行政書士に向いている人はどんな人?
- どうすれば行政書士として成功できるのか?
以上については、この記事で後述しますが、そのなかでも、あなたが廃業しないために
は
- 未経験からの独立は避ける
- 独立後、顧客獲得のためには何でもする
という2点が、もっとも心に刻んで欲しい超重要事項です。
そして、この記事などを参考にしてノウハウやスキルを蓄積することはもちろんのこと、最後は
「決してあきらめず、成功するまで徹底してやり抜く」
といった覚悟のある姿勢と行動量が成否を決定することになるのです。
当然のことですが、駆け出しの状態で「行動量」なくして成功するはずがありません。
そして、その行動量を支えるものが「覚悟」。
結論から言えば、「成功できるだろうか?」と考える人ではなく、「絶対に成功してやる!」と考える人のほうが、圧倒的に成功しやすいのです。
独立前に行政書士として経験を積む ~合格後の働き方は大きく3つ!
前述のとおり、なんとしても「未経験からの独立」は避けなければなりません。
というのも、どんなに「覚悟」を持って「行動量」を増やそうとも、努力の方向性が間違えていると意味がないからです。
そして、その努力の方向性を正しく理解するためには、何より「行政書士としての業務経験」の有無によります。
それでは、独立前に行政書士の業務経験を積むにはどうしたら良いのでしょうか?
そもそも、行政書士試験の合格後の働き方は、大きく次の3つにわけることができます。
- サラリーマンや会社員として働きながら副業で稼ぐ
- 行政書士法人などに転職する
- 自分で独立開業して事務所を持つ
つまり、まずは行政書士として副業して副収入を得たり、行政書士が共同して設立した行政書士法人に転職したりすることにより、独立前に実務経験を積むことができます。
独立志向の方のなかには、資格を取るとすぐに独立したい!と考える人が多くいます。
しかし、焦って独立するのではなく、長期的な戦略を立て、計画的に行政書士の実務経験を積むようにして欲しいと思います。
それが回り道のようで、最短の成功の道に他なりません。
なお、行政書士の副業や行政書士法人について詳しくは、下記の記事をチェックしてみてください。
独立開業した行政書士の年収はどのくらい?
独立開業して、どのくらいの年収を稼げるのかは気になりますよね。
そもそも、行政書士の平均年収は600万円前後で、年齢による違いを見ていきます。
- 20歳~24歳:342万円
- 25歳~29歳:426万円
- 30歳~34歳:468万円
- 35歳~39歳:534万円
- 40歳~44歳:600万円
- 45歳~49歳:672万円
- 50歳~54歳:720万円
- 55歳~59歳:714万円
- 60歳~65歳:486万円
なお、このデータは行政書士法人で働く人も独立開業している人も含まれているものです。
独立開業してすぐに稼げるわけではないものの、上手く宣伝したり努力をしたりすれば年収1,000万円もけっして夢ではありません。
開業して成功して年収2,000万円~3,000万円くらいもらっている行政書士もいますので、年収を上げられるのかどうかは全て自分次第だと心得ておきましょう。
※行政書士の年収や給料については、下記の記事に詳しく説明しています。
独立開業するメリットとデメリット
以下、独立開業するメリットとデメリットをまとめてみました。
- 定時出社やサービス残業など会社に縛られることなく、自分のペースで行政書士の業務に携わることができる
- 自宅を事務所にすれば賃貸料やテナント料がかからない(ランニングコストを削減できる)
- 定年退職は特にないため、何歳になっても士業として働くことができる
- 実績を積み重ねれば、副業では難しいセミナーや講演で収入アップを図ることができる
- 行政書士会への登録料に加えて初期費用が発生する
- 開業してすぐに顧客を獲得して利益を出せるわけではない(軌道に乗るまでに時間がかかる)
- 自分が社長になるため、行政書士としての通常業務と事務所経営を両立させる必要がある
- 仕事を獲得できなければ収入が減るため、生活が困窮する恐れがある
「行政書士として独立開業すれば会社員時代よりも稼げる」と安易に考えることは禁物です。
いくつかのデメリットやリスクもありますので、独立前には、十分に分析して、収入が安定する見通しが立つまで、戦略や戦術を練り上げて欲しいと思います。
行政書士の独立を成功させるためのコツ
営業活動に力を入れる
独立系行政書士として顧客を獲得するためには、地道な営業が欠かせません。
ただ事務所を構えているだけで仕事は入ってきません。会社員とは異なり、自分で集客ができなければ収入はゼロ円です。
実際、独立した行政書士が廃業してしまう理由は、営業が上手くいかず売上が立たない、というケースがダントツです。
行政書士の営業方法は、大きくわけるとリアル営業とネット営業の2種類。
リアル営業は対面でのアピール、ネット営業はインターネットを使った集客を指します。
リアル営業の第一歩は行政書士仲間や他士業の知り合いと親しくなり、紹介を受けること。
ネット営業は自社のホームページやブログで情報発信することから始まります。
行政書士のサービスを必要としている見込み客は様々な場所にいますので、成功している人ほどリアル営業とネット営業の両方に力を入れています。
※行政書士の営業手法について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
専門分野を絞り、差別化する
行政書士は幅広い業務を取り扱うことができる士業です。
しかし、行政書士や行政書士事務所の数は非常に多く、ライバルに勝つには専門分野を絞らないといけません。
行政書士の専門分野は、次の8つに大きくわけることができます。
- 建設・産廃
- 運輸・交通
- 外国人在留資格
- 風俗営業
- 法務・会計
- 会社法
- 遺言・相続
- 著作権
「何でもできます」と掲げている行政書士事務所よりも、専門分野を絞った方が依頼者の要望に応えやすくなるのがメリットです。
もちろん、複数の専門分野を掛け合わせた行政書士事務所を独立開業するのも選択肢の一つで、どちらにしても他の行政書士に負けない付加価値を作り出す努力をしましょう。
ただし、あまりにも専門分野を絞りすぎている行政書士は、独立開業してから仕事があまり舞い込んでこないというデメリットがありますので、「どの程度まで絞り込むのか」のバランスを考える必要があります。
以下の専門分野に関するコラムも参考にしてみてください。
人脈を大切にする
独占業務のところでも説明しましたが、行政書士の業務は、弁護士や司法書士と一部被っています。
そのため、こうした他士業との人脈を築くことにより、業務を紹介してもらえる可能性が高まります。
もちろん、同じ行政書士同士との人脈も大切。
独立したばかりの行政書士は特に、こうした士業仲間との人脈を大切にしていきましょう。
業務・経営のための知識を磨く
独立を成功させるためには、業務や経営のための知識も必須です。
行政書士の業務・経営のために必要な知識には、以下のようなものがあります。
- 会社設立で必要な書類の作成や手続きの方法
- 顧客に対して実施するサービス(許認可申請書の作成など)のノウハウ
- 名刺や開業挨拶状を配って顧客を獲得する事務所の宣伝活動の方法
- 会社を長く存続させるための事務所経営のやり方
- アルバイトやスタッフを雇った際の人の使い方
独立開業する予定の方は、試験のための知識に加えて事務所を経営する上で欠かせない知識やスキルも習得しないといけません。
「何とかなるだろう」と行き当たりばったりで行政書士として独立開業すると失敗しやすいので注意すべきです。
行政書士として独立に向く人
ここまで、行政書士として独立を成功させるポイントについて見てきました。
それでは、実際に行政書士として独立するのに向いている方は、どのような方でしょうか?
何事にもチャレンジでき、フットワークが軽い方
行政書士は書類作成のプロフェッショナルと言われますが、ずっと机にかじり付いていれば良い、というものではありません。
特に駆け出しの頃は、自宅や事務所で待っていても、決して仕事は舞い込んできません。
先輩や士業仲間、見込み顧客が集まる会合へ顔を出す、ホームページやブログを作って情報発信をするなど、あらゆる活動を通じて、案件に結び付けていきます。
リスクが大きい仕事だからこそ、自分の頭で考えて積極的に動くチャレンジ志向と、すぐに実行に移すフットワークの良さが重要です。
物事をポジティブに考えられる方
前述のとおり、行政書士としての独立は、不安定かつリスクのある状況です。
アテにしていた案件が消滅したり、取引先が倒産したり、中小企業の世界では予測できない状況は珍しいことではありません。
そのようななかでも、ポジティブに考え、次の一手を打てる方が独立に向いています。
物事を客観的に分析できる方
「ポジティブな方が向いている」といっても、ただ能天気なだけでは困ります。
行政書士として独立して成功するためには、単に書類作成するだけでなく、顧客の要求や課題の本質や全体像を掴み、客観的に分析できる力が必須です。
特に、独占業務以外のコンサルティングに乗り出すためには、クライアントの状況を的確に判断し、全体最適の観点から分析を行うことが求められます。
多くの方と協働できる組織と違い、独立した行政書士は一人ですべてを判断しなければなりません。
表層的な事象に囚われることなく、全体を掴んだうえで本質を見極め、多面的な分析を行う能力が求められます。
人を巻き込む力のある方
行政書士は、顧客の課題を解決するために、様々な専門家とコミュニケーションを取り、巻き込んでいく力が求められます。
顧客の課題に応じて、弁護士・社労士・司法書士など、多様な専門家と顧客を橋渡しするケースが多々あります。
また、普段から多くの方とコミュニケーションを欠かさないことで、紹介や案件が舞い込むことにも繋がります。
「独立した士業」というと一匹狼的なイメージがあるかも知れませんが、コミュニケーション能力が高くないと、いずれ行き詰ることにもなりかねません。
好奇心が強く、人と関わるのが好きな方が、向いている仕事といえます。
コツコツを仕事を積み上げられる方
小さな依頼であっても丁寧に取り組むこと・・・・これが出来ない方は、独立系行政書士に限らず、どんな職業であっても成功できません。
今、目の前にある仕事に全力を注ぐ・・・この繰り返しにより、顧客から「仕事が丁寧で信頼できる人だ」という評価を得られ、リピートに繋がります。
成功している行政書士は、どんな仕事にも手を抜かない方であり、それ以外に顧客の信頼を獲得する方法はありません。
そのことを胸に深く刻み、仕事に取り組んで行きましょう。
行政書士として独立に向かない人
逆に、独立に向いていないのは、以下のような方です。
- コミュニケーションが苦手、人づきあいが嫌い
- 自ら考えて積極的に動こうとしない
- 資格さえあれば、何とかなると思っている
- 打たれ弱い
- 指示されたことをする方が得意
- 仕事が雑
当然ですが、「独立に向いている人」の逆のケースが向いていない人となります。
一度自分に適性があるのかどうか、胸に手を当て、しっかり考えてみることも大切です。
行政書士の独立開業の流れ
行政書士として働くに当たり、試験に合格するだけで良いわけではありません。
まずは行政書士会への登録が必要です。無事に登録ができたら、開業届を提出して正式に独立開業となります。
開業までの流れは次のとおりです。
- まずは開業資金を集める(行政書士会への登録や事務所の必要経費、ランニングコストなど)
- 事務所の所在地や事務所名(屋号)を決める
- 事務所を開設する予定地の都道府県行政書士会で登録に必要な書類の「行政書士登録申請書」をもらう
- 必要事項を入力して都道府県行政書士会に提出する(日本行政書士会連合会に提出される)
- 申請書類を提出する際にあらかじめ定められた入会金や会費を納める
- 申請が受理されると審査が開始(審査の期間は1ヵ月~2ヵ月程度)
- 登録や入会完了の通知が郵送される
- 事務所の公式サイトや名刺、開業挨拶状を用意する
- 登録証授与式に参加して税務署に開業届を提出する
登録をしないと行政書士としての業務ができないだけではなく、行政書士会の新人研修や交流会にも参加できませんので注意しましょう。
行政書士会の入会・登録については、くわしくは下記の記事を参考にしてください。
行政書士の独立に必要な費用
行政書士の資格を活かして独立開業しても、すぐに顧客を獲得できるわけではありません。
1年間くらいの期間は食えない点を加味すると、それなりの開業資金を用意する必要があります。
以下に、行政書士の開業資金を項目別でまとめてみました。
行政書士会への登録料
行政書士の開業資金の中でも、行政書士会への登録料がかなりの金額になります。
下記のようにトータルで30万円程度がかかります。
- 入会金として20万円程度
- 登録手数料として25,000円程度
- 3ヵ月分の会費として2万円程度
- 登録免除税として3万円程度
独立して間もない行政書士はすぐに稼ぐことができないため大きな負担ですが、行政書士として活動するためには必要不可欠な費用ですので、計画的に用意しておく必要があります。
※行政書士の登録の詳しい手続きなどについては、下記の記事を参考にしてください。
毎月の家賃(敷金・礼金)
事務所を借りて開業する行政書士は、毎月の家賃がかかります。
テナントによっては敷金や礼金も発生しますので、忘れてはならない開業資金ですね。
場所や広さによって異なりますが、行政書士事務所の賃貸費用は10万円~50万円程度が目安と幅があります。
独立時には、なるべく家賃を抑えたいものですが、顧客に来訪してもらうためにはアクセスの良さも気になるので、どの辺で折り合いとつけるのかが難しいところです。
独立開業すると行政書士事務所の家賃だけではなく、電気代などの光熱費もかかりますので注意しましょう。
業務で使う備品
行政書士の業務で使う備品は、それなりに大きな金額になります。
行政書士の仕事をこなすに当たり、具体的に何を用意すべきなのか見ていきましょう。
- 固定電話やFAX機器
- コピー機(インクジェットプリンタ)
- デスクや椅子
- パソコンやインターネット回線
これらの備品の費用をトータルで考えると、30万円近くの出費になります。
通信機器の中でも、行政書士の業務を行う際に電話回線とFAX機器は必須です。
「プライベート用のスマホがあれば良いのでは?」とイメージしている方はいませんか?
しかし、顧客に対して失礼のないように接する必要がありますので、自宅の電話回線やスマホと行政書士事務所の電話回線はわけるべきです。
全ての備品を新品で購入するとかなりの金額になりますので、机や椅子は中古品で我慢して経費を節約するなどしてください。
営業で必要な広告費
営業で必要な広告費も、行政書士の開業資金の中に含まれます。
ただ黙っているだけで仕事が舞い込んでくることはありませんので、行政書士は自分から積極的に営業して顧客を獲得する努力をしないといけません。
例えば、ネット営業で集客を図る予定であれば、「ホームページ作成ソフト」「レンタルサーバー」「ドメイン使用料」などの費用がかかります。
広告費に資金を費やし過ぎると経営が圧迫しますし、逆に削減しすぎるとお客さんが減りますので難しいところです。
正解不正解はありませんが、トータルの自己資金と照らし合わせてどのくらい広告費に費やすのか考えましょう。
※行政書士の営業方法について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
生活費
士業の多くは知名度や信頼度が上がるにつれて仕事の量が増えますので、最初は無収入で耐えないといけない時期が出てきます。
「仕事が受けられない=全く稼げない」というケースは珍しくありませんので、行政書士事務所の開業資金の中に生活費も入れておきましょう。
「無収入期間が長くなって経営できない…」といった事態を防ぐには、生活費をしっかりと貯金しておくべきです。
多く見積もって1年分の生活費や広告費などのランニングコストがあれば、安心して行政書士の資格を活かして独立開業し、業務をこなしていくことができますよ。
「稼げない」「利益がない」と焦っても仕方がありませんので、行政書士として独立開業する方は地道に営業活動を続けましょう。
行政書士が自宅で独立開業すれば、費用を削減できる!
ここまで見てきたとおり、行政書士の開業資金は、トータルで100万円以上かかることもあります。
開業資金に加えて生活費を加味すると、もっとお金を貯蓄しておかないといけません。
そこで、開業資金の負担を少しでも抑えたい行政書士は、事務所を借りるのではなく自宅で開業しましょう。
自宅を事務所代わりにして、行政書士の業務をこなしている方はたくさんいます。
以下では、行政書士が自宅で開業するメリットをいくつか挙げてみました。
- 敷金や礼金、毎月の家賃を節約して開業資金を抑えられる
- 事務所への移動時間が発生しないため、通勤時間を短縮できる
- 早朝でも深夜でも自分の好きなタイミングで仕事ができる
- 事務所で使う家賃や光熱費を経費として計上できる(節税効果が見込める)
開業資金の負担が減るだけではなく、自宅開業は通勤時間の短縮や節税効果などのメリットもあります。
最初は自宅の一室で開業し、ある程度軌道に乗ってきたら行政書士事務所を持てば良いのです。
ただし、行政書士が自宅事務所で開業するに当たり、「自宅の住所がバレる」「人を雇うのが難しい」「顧客からのイメージが低下する」といったデメリットがありますので気をつけてください。
独立開業するなら実務セミナーや実務講座に参加しよう
独立開業して業務に携わるのであれば、実務セミナーや実務講座に参加すべきです。
副業や行政書士法人に勤務して実務経験な充分な方でも、自分の未経験な業務などを体系的に学べる実務講座は多く、参考になることも多いです。
実務セミナーや実務講座によって違いはありますが、次のように試験勉強とは異なるビジネススキルを身につけることができます。
- 事業の経営やマーケティングの戦略論
- お客様に対するマナーや心遣い
- 独立開業する上で必要な準備
行政書士は雇用が極端に少なくて実務を学ぶ場所が足りない方が多いため、独立開業して自分の力で食べていくなら積極的に経営について学べる場所に足を運ぶべきです。
行政書士のためのセミナーや実務講座は定期的に実施されていますので、独立開業する上で必要な知識を学んでみてください。
行政書士の実務講座については、詳しくは下記の記事を読んでみてください。
行政書士の独立にダブルライセンスも有効
行政書士としての独立を成功させたいのであれば、ダブルライセンスも検討してみましょう。
様々な資格と組み合わせてダブルライセンスになれば、業務の幅を更に広げて他の行政書士と差別化を図ることができます。
起業して成功するには顧客やクライアントを確保しないといけませんので、自分のスキルを高める対策は必須です。
以下では、行政書士と合わせて取得したい資格をいくつか挙げてみました。
- 行政書士と宅建のダブルライセンス⇒不動産や営業許可などの書類作成を請け負う際に、顧客に専門的知識を持ってアドバイスできる
- 行政書士と社労士(社会保険労務士)のダブルライセンス⇒行政書士の業務に加え、労働・税金・年金などの労使系の業務も可能
- 行政書士と中小企業診断士のダブルライセンス⇒創業時の立ち上げから経営コンサルティングまでワンストップのサポートができる
- 行政書士と司法書士のダブルライセンス⇒行政書士の業務に加え、不動産登記・商業登記などのサービスも提供できる
独立開業した行政書士に将来性はあるの?
これから行政書士として働く予定の方や独立開業しようと考えている人は、「将来性のある仕事なの?」と疑問を抱えるのではないでしょうか。
行政書士は社労士や税理士のように顧問契約が難しいのにも関わらず、価格競争は激化していますので、試験を受験する方も減少しています。
こう聞くと行政書士に将来性はないと思われがちですが、官公署に提出する書類の作成やビジネスコンサルタントの需要がなくなることはありません。
10年ほど前と比べてみると行政書士が取り扱える書類の数は7,000種類から10,000種類にまで増えていますので、幅広い業務に携わることができます。
行政書士の独立開業を成功させたいのであれば、自分の得意分野を活かした専門領域を持って積極的に仕事を獲得する必要がありますので、試験に合格してからが本当のスタートです。
※行政書士の将来性や需要については以下の記事でも詳細にまとめてあります。
また、独立前に知っておくことが必要な「行政書士の仕事の詳細」「仕事の覚え方・取り方」などについては、下記の記事もチェックしてみてください。
まとめ
行政書士は雇われるだけではなく、独立開業して自分の事務所を持てる士業です。
独立した行政書士の8割が3年以内に廃業と、決してラクな道ではありません。
しかし、実務経験を重ね、覚悟を持って行動し続ければ、成功は近づきます。
軌道に乗れば、会社員時代よりも稼ぎを増やしたりマイペースで仕事ができたりと、独立開業のメリットはたくさんありますよ。
しかし、金銭的な負担や顧客の確保など押さえておきたいポイントも多々ありますので、独立する前に念入りな戦略を検討してみてください。