行政書士の資格を取得するメリット
行政書士とは行政手続きを専門とする法律家で、「国民にとって身近な街の法律家」とも言われています。
まず最初に、行政書士の資格を取得するに当たって一体どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
資格取得のメリット(1)独立開業できる
行政書士の資格を取得する一番のメリットは、独立開業できるところです。
行政書士は専門性に欠ける資格ですので、一般企業への就職や転職ではそこまで有利になりません。
しかし、実務経験がなくてもすぐに開業できるため、将来的に独立を検討している方におすすめの資格ですね。
「作業用のデスクやチェア」「パソコン」「インターネット環境」「電話」「応接セット」があれば、事務所を開業して行政書士の資格を活かして業務ができます。
独立開業の初期費用を抑えたい方は、自宅を事務所として利用しましょう。
※行政書士の独立に興味のある方は、下記の記事もチェックしてみてください。
資格取得のメリット(2)就職・転職でアピールできる
上記の項目では、行政書士は一般企業への就職や転職でそこまで有利にならないと記載しました。
それでも、「他の人たちよりも法律の知識がある」「努力して難関資格に合格した」とアピールできますよ。
行政書士の資格を持っているだけで高度な学習能力を備えている証明になりますので、就職や転職の採用面接で他者と差別化を図れるわけです。
※行政書士の転職については、下記の記事もチェックしてみてください。
資格取得のメリット(3)他の資格取得に相乗効果がある
行政書士は、他の資格取得との相乗効果があります。
行政書士だけではなく、「司法書士」「社会保険労務士」「中小企業診断士」「宅建士」とのダブルライセンスを目指す方は増えました。
複数の士業を連携させることにより、1ヵ所でより多くの業務を提供できるようになるのがダブルライセンスのメリットです。
※行政書士のダブルライセンスについては、下記の記事も参考にしてみてください。
行政書士の資格の取得は、どんな人におすすめ?
行政書士の資格の取得は下記に当てはまる人におすすめ!
社会人
行政書士の資格を取得するために勉強している社会人は少なくありません。
「転職で何か武器が欲しい」「将来的には独立を考えている」という社会人に行政書士はおすすめです。
通信講座を利用すれば、働きながらでも空いた時間を有効活用して資格取得の勉強ができます。
大学生
行政書士の試験に年齢制限はありませんので、大学生や専門学生も受験できます。
令和元年度(2019年度)の行政書士試験では、10代の合格率は0.9%(合格者数37人)とのデータが出ていました。
大学生が行政書士の資格を取得するメリットは次の3つですね。
- 金融業界や士業業界への転職活動でアピールできる
- 更なるキャリア形成やステップアップの足掛かりになる
- 20代と早い段階から独立開業を視野に入れられる
法学部に属している大学生は、試験の主要科目を大学で学びますので行政書士の資格を取得しやすいでしょう。
※大学生が行政書士を目指すメリットについては、下記の記事も参考にしてみてください。
女性
士業と聞き、男性が取得する資格だとイメージしている方はいませんか?
しかし、現代では行政書士の資格取得を目指す女性が増えています。
以下では、女性行政書士の強みをいくつか挙げてみました。
- 丁寧で細かい所にも目配りできる女性は、細かい作業の多い行政書士の仕事に向いている
- 女性の問題解決に同性として相談しやすい(女性の顧客を確保できる)
- 官公署へ提出する書類の作成や顧客からの相談業務は、家事や育児とも両立しやすい
行政書士試験の女性比率は低いのが現状ですが、需要はありますので安心してください。
※女性が行政書士に向く理由については、下記の記事も参考にしてみてください。
行政書士の資格の取得は、どんな人に向いている?
ここでは、行政書士の資格の取得がどんな人に向いているのかいくつか紹介していきます。
事務処理能力が高い
事務処理能力が高いのかどうかは、行政書士の業務をこなす上で欠かせません。
それは許認可申請や権利関係の書類を中心に、誤字脱字はもちろんのこと記入漏れのミスがないように作成しないといけないのが理由です。
顧客の都合次第では手続きに必要な書類が数百枚に及ぶこともありますので、タイトなスケジュールでも正確に素早く処理できる能力が求められます。
営業力がある
行政書士の資格を持っていても、独立開業して待っているだけで仕事が舞い込んでくるわけではありません。
自分から積極的に動かないと案件を獲得できないため、「見込みのありそうな企業を回る」「ホームページやチラシを作成する」「地域のイベントに参加する」など営業力の高さは重要ですよ。
コミュニケーション力が高い
行政書士の資格は、クライアントの意向を汲み取ってしっかりと解決策を提示できるコミュニケーション能力の高い人に向いています。
行政書士は法律系の士業であると同時にサービス業でもありますので、顧客との信頼関係を構築できるスキルが欠かせません。
好奇心が強い
好奇心旺盛な人は行政書士の資格に向いています。
行政書士が取り扱える書類は10,000種類を超えるほど多く、今までに手掛けたことのない案件に出くわすケースは珍しくありません。
そんな時に好奇心の強い人であれば、自ら進んで興味を持ったり勉強したりできますので、より顧客を獲得できるわけです。
行政書士の年収の相場は?
行政書士の年収の相場は、下記のように年齢で変わります。
年齢 | 行政書士の平均年収 |
---|---|
20代 | 380万円 |
30代 | 490万円 |
40代 | 630万円 |
50代 | 700万円 |
60歳~65歳 | 460万円 |
70歳以上 | 400万円 |
参考:国税庁統計情報・厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html
行政書士の平均年収は、大よそ400万円~500万円程度です。
大きく稼いでいる行政書士がいれば、平均に満たない方もいますね。
行政書士の仕事の内容
行政書士の仕事内容を大きくわけると次の3種類です。
行政書士の仕事内容 | |
---|---|
書類作成業務 | 官公署に提出する書類の作成など |
手続代理業務 | 作成した書類を官公署に提出する手続きの代理 |
相談業務 | 行政書士が取り扱える書類の作成に関する相談 |
行政書士が作成できる書類は10,000種類を超えますので、「○○○がメインの業務」と決められているわけではありません。
※行政書士の仕事内容について詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。
行政書士の独占業務
行政書士の資格を持つ者しかできない独占業務は次の3つです。
- 官公署に提出する書類の作成
- 権利義務に関する書類の作成
- 事実証明に関する書類の作成
行政書士および行政書士法人でない者が市役所や区役所など官公署に提出する書類作成の業務を行うのは法律で禁じられています。
※行政書士の独占業務について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
行政書士の業務分野
行政書士業務の中でも、「建設・建築分野」「産廃分野」「自動車・運輸分野」「外国人在留資格分野」「会社設立・会社法分野」「風俗営業分野」は需要が高い傾向があります。
他士業とは違って業務分野や業務範囲は定まっていませんが、何に強い行政書士なのか顧客に示すのは大事です。
行政書士の資格を取得する方法
これから試験の受験を目指す方のために、行政書士の資格を取得する方法をまとめてみました。
取得する方法(1)行政書士試験に合格する
行政書士試験に合格するのは、行政書士の資格を取得する代表的な方法です。
試験は毎年1回、例年11月の第2日曜日に実施されます。
試験場に関する相談は、一般財団法人行政書士試験研究センターに問い合わせましょう。
※行政書士試験制度の概要については、下記記事を参考にしてください。
取得する方法(2)公務員として経験を積む
行政書士の資格を取得するに当たり、公務員として経験を積む方法もありますよ。
国家公務員や地方公務員として通算20年以上(高卒者については17年以上)行政事務を経験すると、行政書士の資格が与えられるのです。
試験に合格しなくても良いため、最初に公務員を目指す方は少なくありません。
※公務員から行政書士になる手続きについて詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
取得する方法(3)他の国家資格を取得する
「弁護士」「税理士」「弁理士」「公認会計士」の資格を取得した方は、同時に行政書士の資格も取得できます。
試験を受けずとも行政書士資格の登録が認められますし、ダブルライセンスで様々な業務に携われるのは大きなメリットです。
行政書士試験の概要
このページでは、行政書士試験の概要についてまとめてみました。
受験資格
行政書士の試験には、特に受験資格がありません。
「年齢」「性別」「学歴」「国籍」に関係なく、誰でも行政書士試験にチャレンジできます。
受験費用
行政書士試験の受験費用は7,000円です。
地震や台風など試験を実施しなかった場合を除き、受験手数料が返還されることはありません。
受験スケジュール
上記の項目でも解説しましたが、行政書士の受験スケジュールは毎年11月の第2日曜日に実施されます。
あらかじめ試験の日程が決まっていますので、試験日から逆算して学習のスケジュールを立てるのがポイントですね。
試験科目
行政書士の試験科目は、「法令科目」と「一般知識」の2つの分野に大きくわけられます。
行政書士の試験科目 | |
---|---|
法令科目 | 「基礎法学」「憲法」「行政法」「民法」「商法」 |
一般知識 | 「政治・経済・社会」「情報通信・個人情報保護」「文章理解」 |
法令科目が全体の8割以上を占めていますので、この分野を重点的に学習しないといけません。
合格基準点
行政書士試験の合格基準点は、次の3つをクリアすれば良い絶対評価です。
- 法令科目で122点以上得点する
- 一般知識で24点以上得点する
- 合計で180点(6割)以上得点する
法令科目が満点でも、一般知識が24点未満だと不合格になりますので注意しましょう。
合格率
行政書士試験の合格率は、毎年10%~15%程度で推移しています。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2016年度(平成28年度) | 41,053名 | 4,084名 | 10.0% |
2017年度(平成29年度) | 40,449名 | 6,360名 | 15.7% |
2018年度(平成30年度) | 39,105名 | 4,968名 | 12.7% |
2019年度(令和1年度) | 39,821名 | 4,571名 | 11.5% |
2020年度(令和2年度) | 41,681名 | 4,470名 | 10.7% |
10人に1人合格できるかできないかのレベルですので、行政書士は難易度の高い資格試験です。
行政書士試験による資格取得に向けた勉強法
行政書士の資格取得に向けた試験の勉強法は、「通学」「通信講座」「独学」の3種類に大きくわけられます。
通学
行政書士に限らず、法律系資格試験の勉強は通学スタイルが主流でした。
試験対策に詳しい講師から直に教えてもらえるのが通学の勉強法のメリットです。
通信講座
近年ではスクールへの通学ではなく、通信講座で行政書士試験合格を目指す方が増えました。
パソコンやスマホを使い、いつでも好きなタイミングで学習を進めることができますよ。
独学
スクールへの通学や通信講座に頼らずに、独学で行政書士の試験勉強を進めている方はいます。
試験対策に特化したテキストを選んだり合理的な勉強法を把握したりしていれば、独学で行政書士の試験に合格するのは不可能ではありません。
行政書士取得(合格)までの最短ルートは?
このページでは、行政書士の試験に合格して資格を取得するまでの最短ルートについて解説していきます。
最短ルートは4~5ヵ月で試験に合格
個人によって違いはありますが、行政書士試験合格までの最短ルートは4ヵ月~5ヵ月です。
最短ルートで行政書士試験の合格を目指すに当たり、押さえておきたいポイントをいくつか挙げてみました。
- 既に多くの合格者を輩出している有名スクールの通信講座を利用する
- 記述式の問題や法改正などの情報収集など効率良く学習する
- 試験の頻出箇所を押さえて最新の情報を踏まえて勉強する
通信講座では蓄積されたノウハウやプロの講師の講義を受けられますので、合格率がアップすること間違いなしです。
他の士業の資格との違い
行政書士と他の士業の資格に一体どんな違いがあるのか見ていきましょう。
弁護士との違い
行政書士と弁護士は、両方とも法律サービスを職務とする専門家です。
しかし、行政書士は弁護士とは違い、「依頼者の代わりに訴訟提起の申し立て代理人になる」「訴状の裁判書類を作成する」といった法律行為は認められていません。
弁護士の資格を持つ方は、全ての法律に関する事務と相談業務を行うことができます。
※行政書士と弁護士との業務の違いについて詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
https://gyousei-fight.com/gyousei-syoshi-bengoshi/
司法書士との違い
行政書士と司法書士は同じ法律の専門家ですが、業務内容に大きな違いあり!
行政書士は官公署への書類提出がメインの業務なのに対して、司法書士は法務局・裁判所への書類提出が主な業務ですね。
司法書士は相続や不動産の登記申請など私たちの身近な問題を取り扱うため、「くらしの法律家」とも呼ばれることがあります。
行政書士とのダブルライセンスに向いた資格
ここでは、行政書士とのダブルライセンスに向いている資格をいくつか挙げてみました。
社会保険労務士(社労士)
行政書士と社会保険労務士(社労士)のダブルライセンスには次のメリットがあります。
- 行政書士は官公署への申請代理、社労士は社会保険関係の手続き代理と足りない部分を補える
- 独立開業した時にセールスポイントが増えて営業しやすくなる
- 様々な知識を有していることでクライアントからの信用力がアップする
業務の安定化や新規顧客開拓を図るに当たり、行政書士と社会保険労務士(社労士)のダブルライセンスは効果的です。
司法書士
最初に行政書士の資格を取得し、その後に司法書士とステップアップする方は少なくありません。
行政書士と司法書士のダブルライセンスは、それぞれの強みを活かして独立開業して大幅な年収アップや売上げアップが期待できます。
ただし、司法書士は超難関資格で簡単に合格できる試験ではないと心得ておきましょう。
※行政書士と司法書士のダブルライセンスについて詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。
宅地建物取引士(宅建士)
宅地建物取引士(宅建士)は不動産取引のプロフェッショナルで、行政書士とのダブルライセンスに向いています。
2つの資格を持つことにより、「不動産売買から必要書類の提出までの業務を一貫して行える」「コンサルティングの幅が広がる」といったメリットあり!
行政書士と宅地建物取引士(宅建士)のダブルライセンスに関しては、こちらのページも参考にしてみてください。
※行政書士と宅建とのダブルライセンスについて詳しくは、下記記事も参考にしてみてください。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題の診断や助言を行う専門家です。
行政書士と中小企業診断士のダブルライセンスは、会社を設立する段階で公的書類の作成をサポートしたり企業経営の相談に乗ったりとワンストップサービスを提供できます。
企業にとって頼りになりますので、行政書士と中小企業診断士の両方の資格を持っていれば新規顧客の開拓に繋がるでしょう。
まとめ
行政書士の資格を取得するメリットや向いている人、試験概要や勉強法についておわかり頂けましたか?
「業務範囲の拡大の可能性がある」「申請等に関する法改正は終わらない」といった理由で、行政書士は将来性のある資格だと考えられます。
通学や通信講座を利用すれば初学者でも合格できますので、行政書士の資格取得を目指してみてください。
■
行政書士の資格に関する記事は、下記も参考にしてください。
<資格の概要>
- 行政書士とは? 行政書士になるメリット・デメリット【人気!】
- 行政書士になる方法
- 行政書士の需要・将来性【おすすめ】
<行政書士の仕事>
- 独占業務
- 仕事の内容、仕事の覚え方・取り方【おすすめ】
- 失敗しない独立・開業方法【人気!】
- 不服申し立てができる特定行政書士【人気!】
- ADR(裁判外紛争解決手続)の業務【おすすめ】
- ダブルライセンス
- 資格を活かした転職
<行政書士とお金>
- 給与や年収
- 報酬額の相場・報酬額の決め方【おすすめ】
- 資格を活かした副業【人気!】
<行政書士の活動・その他>
.